- 2017-11-1
- 融資サポート
- 金融機関とのつきあい方
これからの士業は、金融機関に対する「目利き力」が重要となってきます
こんにちは。株式会社ネクストフェイズのヒガシカワです。
10月25日(水)に金融庁から発表された「平成28事務年度 金融レポ-ト」について、
引き続きお伝えしていきます。
今回は、「地域金融機関を取り巻く現状」についてお伝えします。
1.地域銀行の経営状況
金融庁では、平成25 事務年度以降、地域銀行が直面している人口減少や低金利環境の継続といった
環境の変化が地域銀行の収益に与える影響の試算を行ってきました。
その試算の結果わかったことは、
ⅰ 金融緩和政策の継続により、長短金利差が縮小し、収益性が低下している。
ⅱ 金利の比較的高い既存貸出の返済・借換や保有債券の償還が進み、金利の低い足下の新規貸出や
債券に置き換わるため、貸出金や有価証券全体の利回りが低下する。
ⅲ 中長期的にも生産年齢人口の減少により借入需要が低下し、貸出残高が減少する一方、
預金保有残高の多い高齢者の割合が増加するため、預貸率が低下する。
ということで、わかりやすく言うと、
「現在、金融機関が行っている
「信用力の高い先や担保・保証のある先への融資」
「国債への投資」
だけで収益を確保するビジネスモデルを維持することは、難しい」
ということだと、このレポートでは伝えられています。
実際、2017 年3月期決算を見ると、前期と比べ、貸出利率も低下し、手数料収入も減少するなど、
顧客向けサービス業務の利益は過半数の地域銀行でマイナスとなっています。
これらのことから言えることは、
「今までと同じビジネスモデルを継続しようとしている金融機関は、収益の上げづらい
金融機関になってしまう」
ということになるでしょう。
2.金融機関における利益確保の動きと問題点
2016 年度においては、顧客向けサービス業務の利益が減少する中、当期純利益の確保に向け、
以下のような動きが見られました。
a)有価証券運用による収益への依存を高める動き
<現状>
地域銀行においては、預貸率の低下に伴い、収益に占める有価証券運用の割合が高まっており、
リスクテイクに見合った運用態勢やリスク管理態勢の構築がこれまで以上に重要となっている。
こうした中、顧客向けサービス業務の利益がマイナスとなっている地域銀行の多くは、
有価証券運用による短期的な収益への依存を一段と高めている。
<問題点>
含み益や自己資本に十分な余力がない地域銀行においては、市場環境が急変し損失が顕現化すれば、
将来的に財務の健全性を更に悪化させるおそれがある。
b)貸出分野における量的拡大を図る動き
<現状>
地域銀行全体の貸出残高は増加傾向にあるが、その内訳を見ると、多くの地域銀行で、
アパート・マンション向けや不動産業向けの融資が増加している。
また、人口減少が著しい地域の地域銀行では、人口減少が比較的緩やかな三大都市や
地方の中核都市に進出して住宅ローンに注力する動きも見られる。
<問題点>
人口減少が継続し、全ての金融機関が融資量の拡大を続けることが現実的ではない中で、
依然として、長短の金利差による収益を期待し、担保・保証に依存した融資の量的拡大に
頼っている金融機関については、そのビジネスモデルの持続可能性が懸念される。
3.「選ばれる金融機関」と「淘汰される金融機関」
このように、金融機関を取り巻く環境は、どんどん悪化し、既存のビジネスモデルを継続するだけでは、
金融機関経営が成り立たなくなってくる可能性が高いのではないかと思います。
今から、「どの銀行が、どのようなビジネスモデルで経営を行っているのか」を見極めることで、
「どの金融機関が、淘汰される金融機関になるのか」ということが見えてきます。
今回のレポートで言うと、
(1)有価証券の運用割合が大きい金融機関
(2)アパート・マンション向けや不動産業向けの融資が大幅に増えている金融機関
(3)担保・保証に依存した融資の量的拡大に頼っている金融機関
というのは、「淘汰される可能性の高い金融機関」と考えられるでしょう。
破綻した金融機関に勤めていた経験から言わせていただくと、
「淘汰される可能性の高い金融機関とつきあっていると、何かあったときに、
とんでもない迷惑を蒙ることになる」
ということを、よく知っておいて欲しいと思います。
その影響で倒産した会社も、何社もありましたので、みなさんや、みなさんのクライアントが、
そのような羽目にあわないよう、今から、つきあうべき金融機関を、きちんと選んでおくべきでしょうね。
1998年から2002年にかけて、多くの金融機関が破綻しました。
私も、破綻した金融機関の一つに勤めていましたが、突然、破綻したため、
約束していた融資を行うことができず、多くの取引先に迷惑をかけてしまいました。
今、考えると、破綻する兆しはありました。
しかし、勤めていた私たちは、そこに目を背けていました。
その結果、多くの取引先が連鎖倒産してしまいました。
そんな不幸な中小企業をもう産み出したくなくて、私は、中小企業に対し、
「金融機関との上手なつきあい方」
をお伝えするようになりました。
「淘汰される可能性の高い金融機関」は、よく観察していると、なんとなくわかります。
「淘汰される可能性の高い金融機関」とつきあい続けても、いいことはあまりありません。
是非、「金融機関への目利き力」を身につけ、「淘汰される可能性の高い金融機関」
とではなく、「生き残り続ける金融機関」と取引されることをお勧めします。
そんな、金融機関に対する目利き力を高めるためのヒントが手に入ります。
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