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齋藤由紀夫さんインタビュー【4】 スモールM&Aアドバイザーってどんな仕事?

東京都港区で、株式会社つながりバンクを経営する齋藤由紀夫さん。 

株式会社つながりバンクは、小規模のM&Aに特化した、
仲介・アドバイザリー業務をメインとしながら、中小企業の課題解決に取り組む会社です。
代表取締役の齋藤さんは2012年の独立以降、70~80件の案件に関与している、
スモールM&A(中小・零細企業のM&A)のエキスパート。

跡継ぎがいないまま経営者が高齢化し、事業承継に悩む中小企業の話は枚挙にいとまがありません。
一方、ノウハウなどを蓄積した企業を買い取って、事業に弾みをつけたい経営者も多数。
両者をつなぐ齋藤さんにスモールM&Aアドバイザーのお仕事についてお話を伺うと、
まあ出るわ出るわ、多彩なエピソードのオンパレードです。
(ここには書けなかったこともたくさん…)

もともと中小企業診断士や税理士、弁護士との親和性が高く、
司法書士にとっても独自の強みを発揮できるフィールドであり、
建設業と縁の深い行政書士、案件をまとめるチカラに優れた保険営業など、
それぞれの職業が、それぞれの知識を活かして、
各方面から深く関わっていけるのが、スモールM&A。
これからの士業・コンサルタントにとって、明るい展望が開けてくるお話です。

いつものように5回連載でお届けします。聞き手はネクストフェイズ編集部ですが、
取材に同席していたネクストフェイズ代表・東川もときどき発言しています。

●齋藤由起夫さんプロフィールはこちら

齋藤由紀夫さんインタビュー(全5回)
「スモールM&Aアドバイザーってどんな仕事?」

【もくじ】
1/中小企業の支援をしたいから「スモール」M&A
2/水増し経費、売り逃げ案件…M&Aの実務トラブル、どうする?
3/診断士も税理士も司法書士も保険営業も、スモールM&Aで活躍できる
4/スモールM&Aの感情トラブルを避けるための「表現」
5/2019年セミナーはM&Aの知識のみならず、案件を発掘する方法も伝えたい
 

第4回 スモールM&Aの感情トラブルを避けるための「表現」

――  感情が絡むとトラブル対処に手がかかりそう。

齋藤  心配いりません。なぜならトラブルについてはある程度パターン化しているからです。

――  パターン化?

齋藤  たとえば、M&Aって進捗が決まっているんですよ。まず意向表明を出します。あ、意向表明とは「これぐらいの金額」で買いたい、不動産でいうといくらで買付しますよというようなものです。法的に縛られるものではないけれど。

――  ふむふむ。

齋藤  そこで金額を出すとき、「はい、いくらで買います」という無味乾燥な言葉で終えてしまうと、売り手の感情を害してトラブルになりやすい。手塩にかけて育てた会社を、まるで商品のように扱われたような気がして。

――  わかります。

齋藤  さらにときどき、上から目線でキツイ条件を書いたりしたものも見かけます。「社長は即時ご退任いただきます」とか。

――  一見丁寧な言葉だけれど社長は傷つく…。

齋藤  でしょ? 右から左への単純取引みたいに自社が取り扱われていると感じたら、「もう売らない」と社長がヘソを曲げても当たり前です。だから僕は、相手によってはラブレターのつもりで意向表明を書くんです。「表現」ひとつで結果が変わりますよ。

――  表現でトラブル回避ができると。

齋藤  はい。それに手続きが進めば進むほど、買い手が強気になりがちなんです。デューデリ後に値切ったりとか。

――  さらに社長ショック…。

齋藤  慣れていないアドバイザーだと「このタイミングで、それを、そんなふうに伝えちゃダメでしょう」ということをそのまま伝えたりするんですよ。「デューデリの結果、2,000万を価格から引きます」ってシンプルに。デューデリ後なので表明は当然とはいえ、こんな大きな値引きをそのまま伝えたら絶対トラブルになる。そこで、表現方法の工夫

――  どう言えば。

齋藤  たとえば「投資家からすると、どうしても買った後に5,000万円の追加投資をしなきゃいけない、それがないとこの話は決められない、でも5,000万の値引なんてあり得ないから、2,000万にしてください」とか。

――  同じ2,000万円の価格ダウンなのに。

齋藤  価格を下げる、つまり会社を買い叩くのが仕事だと考える買い手側アドバイザーが少なからずいるから、こういうことが起こるんです。たしかに、その要素があるのは否定できませんし、再生案件などではそれが許されていました、とくに大型案件では。でも僕や、また読者のみなさんのように中小企業を相手にするのなら、ここは襟を正したいポイントです。

――  ほんとですね。

齋藤  逆に売り手側アドバイザーの話をしますと、後で調べればすぐわかるような、たとえば、不良状態の設備や機械があるのに「壊れている設備はありません」とごまかすケースもあるんです。でもそれ、訴求要因になり得るんですよね。売り手側、買い手側、どちら側についても誠実に仕事すれば、人間関係や感情のもつれは避けられるトラブルです。

 


●「とくに初期は、無理矢理にでも話をまとめてしまおうと焦りがちです。
でも条件が整わないなら、グッとこらえて案件を成就させない勇気も資質のうち。
目の前の報酬にとらわれず、また、中小企業の支援であることを忘れず、
本当の意味でのWin-WinなM&Aに絞るほうが、かえって成長が早いですよ」(齋藤さん)

 

2019年現在、スモールM&A市場で人気なのはIT、建設、サブスク系

――  今の業界トレンドなどありますか。

齋藤  今はIT、建設、メンテナンス、人材関連、それから定額課金の会員モデルなどのサブスクリプション系を買いたい人が多いです。

――  建設業との結びつきが強い行政書士さんには朗報です。しかし、なぜその業界が。

齋藤  ITも建設も、儲かっているのに人手不足だからです。それをM&Aで解消しようとしているんですね。また、建設業界ってストックモデルのビジネスがほとんどないんですよ。

東川  1回1回の契約ですからね。

齋藤  はい、来年の予算で終わってしまうとか、オリンピックが終わったらなくなってしまうとか。一部、たとえば橋梁や施設等のメンテナンスビジネスはありますが、ほとんどの建設業はフロー型。それで皆さん、安定的に収益が上がるストック型を求めておられます。

東川  でもノウハウがないビジネスに手を出すのは危険です。

齋藤  そこはやっぱり本業、つまり建設業に近いところからですね。清掃会社とか。

東川  あとは管理会社とか。

齋藤  そうです、マンションの管理会社。また、解体業者が産廃企業を買うケースも、「近いところから」ですね。ほかはどうかな、ビジネスホテルも人気です。自社にノウハウがなくてもきちんとした運営会社に任せれば、ビジネスホテルは安定して売上が立ちます。不動産業みたいなものですね。

――  ほかに「熱い」業界があれば。

齋藤  レンタル会社、技術者・職人専門の派遣会社、あと倉庫業等でしょうか。

――  こういった、今この分野がM&Aの「売り手」として人気というお話は…。

齋藤  もちろんセミナーでさせていただきますよ。どんどん変化してきていますから。

 


●「一時、調剤薬局のブームがあったんですよ。私の感覚の2倍以上で売れていく時代がありました。
今はだいぶ落ち着いています。面取り合戦が終わってきたんですね。
M&Aには、そのときならではのトレンド業界があるんです」(齋藤さん)

 

業界特化したM&Aアドバイザーは強い

齋藤  そういえば弊社のアドバイザーのひとりが、ラブホテルや清掃会社を買いたがっているんですよ、仲介じゃなくて、自分が。またお寺や宗教法人を買いたがっているアドバイザーもいます。

――  ニッチ!

齋藤  そう、先ほど話した「いま注目されている」「いま買いたい人が多い」業界を知るのも大事ですが、こういった誰も目をつけなさそうな分野も狙い目。

東川  今、新しいラブホテルは認可が取れず、ほしい人は既存のものを譲渡してもらうしかありませんからね。

齋藤  一方、売る側としては後継者問題があって、経営者の子供たちはラブホテル業をなかなか継いでくれない。意外と買ってくれたりするのが、不動産投資家です、それも外資系企業の。

東川  ラブホテルは十分に投資に見合うという判断ですね。インバウンド客に人気やとも聞いてますし。

齋藤  また、部屋にカラオケがあるので女子会などの会場として使ってもらう、そこにケータリングサービスを組み合わせて…など、今までの経営者では考えつかないような利用法も増えています。先ほどのトレンド業界に加え、自分ならではのニッチ業界といった専門分野を作ると、M&Aアドバイザーとして強くなりますね。

東川  専門特化することで、十分食えるようになると。

齋藤  食えるようになります。だって専門特化すると、かならず案件が舞い込みやすくなりますから。この世界では今、ビジネスデューデリできる人がまだまだ少ない。たとえば士業やコンサルタントになる前に身を置いていた業界、製造業出身とか外食業出身とか、目利きしやすい業界をお持ちの方は強いですよ。

――  スモールM&Aの世界って、バラエティ豊か。

齋藤  そのとおり、だから誰もが活躍できる可能性があるんです。ちょっと思いつくだけでも…:

●スモールM&Aの世界で…
・売り手側アドバイザーになる
・買い手側アドバイザーになる
・仲介する
・紹介するに留める
・自分は積極的に動かず受託に徹する
・実務ではなく案件発掘に特化する
・自分自身が「買う側」にまわる などなど…

――  関わる分野やプレイヤーの種類が多いぶん、業界の変化も激しいですね。

齋藤  はい、2018年と2019年で大きく違っている部分も多いですよ。たとえば…。

 

第5回に続きます)


齋藤由紀夫さんインタビュー(全5回)
「スモールM&Aアドバイザーってどんな仕事?」

【もくじ】
1/中小企業の支援をしたいから「スモール」M&A
2/水増し経費、売り逃げ案件…M&Aの実務トラブル、どうする?
3/診断士も税理士も司法書士も保険営業も、スモールM&Aで活躍できる
4/スモールM&Aの感情トラブルを避けるための「表現」
5/2019年セミナーはM&Aの知識のみならず、案件を発掘する方法も伝えたい
 

齋藤由紀夫スモールM&Aアドバイザーによる【スモールM&A】ノウハウ入門講座2019

今回の取材で話していただいたスモールM&Aについて、実務テクニックはもちろん、今までの歴史から現在のマーケット傾向まで、最新の実例を交えてお話しします。

2018年に行った同セミナーも好評でしたが、今回はとくに初心者がつまずきがちなソーシング(売り手発掘)についても時間を割いてくださるとのこと。
 
もちろん質問のための時間も設けていますので、気になること、深く知りたいことなど、何でも気軽にご相談ください。
 
●日時・会場
2019年8月2日(金)  18:00〜20:30 DAYS赤坂見附
2019年8月10日(土)  15:00〜17:30 DAYS赤坂見附
2019年8月17日(土)  14:00〜16:30 サニーストンホテル<江坂>北館
2019年8月21日(水)  18:00〜20:30 サニーストンホテル<江坂>北館
●定員 各回 25名
●受講料 6,500円(税別)
 
●セミナー詳細、前回の受講者の声、お申し込みなどは下記からどうぞ↓

 
 

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