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金融機関の動きは今後大きく変わるでしょう。士業・コンサルタントにとってのチャンスです。
こんにちは。株式会社ネクストフェイズのヒガシカワです。
金融庁は2014年から金融機関に対し、事業性評価融資の推進を指導してきました。
事業性評価融資とは、「決算書の内容や担保・保証人だけで判断するのではなく、事業内容や成長可能性等を評価して融資すること」です。
2014年以降、金融庁が地道に指導してきた結果、少しずつ事業性評価融資を進める金融機関は増えてきました。最近は担保だけでなく、経営者保証も積極的にはずそうとする金融機関もちらほら現れています。この件については、私も以前この記事で触れました。
しかしながら事業性評価融資が現在の融資の主流となっているかというと、残念ながら「No」と言わざるを得ません。まだまだ不動産担保融資や経営者保証融資が中心です。
2020年10月13日の日本経済新聞に、興味深い記事が掲載されました。
●無形資産担保に融資 事業価値を評価 政府検討、不動産偏重見直し(日本経済新聞・2020/10/13)
以下、私が注目した部分を引用します。
・政府は企業の技術や顧客基盤などの無形資産を事業の価値として評価し、担保にできる新制度を検討する
・金融庁は11月にも民法の担保制度に関する研究会を立ち上げる。民法を所管する法務省とも協議し、法改正を視野に2021年にも法制審議会(法相の諮問機関)での議論に入る
・新たな仕組みでは不動産などの個別資産ではなく、将来にわたって稼ぎ出す力を評価する。企業が強みとする技術やノウハウ、取引網、特許など事業全体の価値を担保にすることを想定する
とくに「法改正を視野に」って、これはもしかして法整備が…と思ったのです。
後日、NHKニュースでも2020年11月9日に報道されています。
●中小企業の資金繰り支援へ 独自技術や将来性をより評価 金融庁 | 新型コロナウイルス | NHKニュース
以下、細かくお話ししましょう。
上記で引用した部分を読みながら、「法律により、否が応でも金融機関が事業性評価融資に取り組まざるを得なくなる」のでは…と私は考えました。
2021年に法制審議会での議論に入るとのことなので、実際に法律化されたとしても、まだ先のことになると思います。が、もしこの話が進むと、その準備にあたって金融機関の動きは大きく変わってくるでしょう。
なぜなら事業性評価融資を行うためには金融機関の目利き力の強化が必要不可欠であるにもかかわらず、現場にはその目利き力がほとんどないからです。
もちろん、すべての金融機関担当者に目利き力がないわけではなりません。
しかし多くの担当者は、取引先企業に将来性があるかどうかを把握できていないのが実情です。その把握のためには担当者の「情報収集能力」と「情報分析能力」、それと「時間」が必要なのですが…。
昔の担当者は取引先に足繁く通うことで、その企業の事業内容や強みを把握していました。社長に何度も会って話を聞いたり、現場を実際に見たり従業員と会話するなどして事業運営を観察し、現状を掴んでいたのです。
毎日そのような活動を行うと徐々に質問力や観察力が鋭くなってきて、より情報収集能力は強化されていました。またこのような仕事姿勢は上司や先輩の後ろ姿を見たり、指導を受けたりすることで、次の世代へ受け継がれるものでもありました。
しかし今の担当者には、取引先企業に通って情報を収集する時間もなければ、上司や先輩からその手法を教えられる機会も以前に比べれば多くありません。個人的にセンスのある担当者を除き、多くの金融機関担当者は情報収集能力が著しく低下してしまったのです。
バブル崩壊に伴う不良債権の増大により金融機関の経営が悪化したことを受け、金融システムを維持するため、1999年に制定されたのが「金融検査マニュアル」。
この金融検査マニュアルは「財務内容」と「保全(担保や保証人)」を重視していたため、融資をする際にそれ以外の情報はほとんど必要なくなってしまいました。
いくら事業に将来性があると担当者が見込んでも、財務内容が悪く、担保も、強い保証人もいない企業は、「格付け」が低くなってしまう。つまり、融資をすることができませんでした。
取引先企業の「強み」や「将来性」を把握しても、融資に好影響を与えることはできない――。担当者が次第に、取引先に対する情報収集を行う意欲を失ったのは自然の流れです。そんな時代が2016年まで続いたのですから、現在の担当者に情報収集能力を求めるのはあまりに気の毒です。
以前は担当者が集めた情報を細かく分析し、「貸せる理由」を探していました。なぜなら原理的に金融機関は「貸したい」からです。(もちろん返済可能な企業に対してだけ、ですが)
また、分析の結果せっかく見つけた「貸せる理由」(それは返済できる理由でもあります)を、上司に納得してもらえるよう説明できなければ融資はできません。積極的に融資に取り組む担当者は、情報収集能力が磨かれていたと同時に、自然と情報分析能力も磨かれていたのですね。
しかし金融検査マニュアルの登場で「財務内容」と「保全」だけ重視すればよい状況になると、わざわざ「貸せる理由」を探しても意味がない。未来があると自分が見込んで貸したいと思った企業に貸せないし、自分の業績にもつながらない。情報収集能力と同時に、次第に情報分析能力も失われていきました。
たとえば、研修や教育で担当者の情報収集能力や情報分析能力が高まったとしましょう。しかし、今の金融機関にはそれを活かすことができません。なぜなら上でも触れたように、担当者に「時間」がないからです。
より精度の高い情報を集めるために、担当者は融資先に対して何度も足を運ぶ必要があります。また1回の訪問においても、相応の時間をかけるべきでしょう。また訪問後、集めた情報を細かく分析する時間も必要です。
しかし残念ながら今の担当者は取引先を多く抱えすぎて、現場に何度も足を運んだり、経営者の話を聞いたりする時間を捻出できません。担当者の目利き力を鍛えることが、今の金融機関にどれほど難しいか、読者のみなさんもよくご理解いただけるでしょう。
もし(今はもちろん仮定の話です)事業性評価融資が法制化されるとなれば、金融機関は現在のビジネスモデルを変えないと対応できません。しかしそう短期間で、担当者の目利き力=情報収集能力・情報分析能力を高められるでしょうか。
さあ、そこで士業・コンサルタントの出番です。
金融機関のビジネスモデルの変化は、大きなチャンス。金融機関の事業性評価融資が法制化されたら(あるいはそれに近いほど金融庁からの指導が厳しくなれば)どうしても、企業の事業性を見極められる専門家の助力が必要となるからです。
すでに融資スタイルを変えつつある、また変えざるを得なくなるかもしれない金融機関と連携するために、士業・コンサルタント側に何が必要か。次回以降のブログでお伝えしましょう。
金融機関が事業性評価融資を行うためには、取引先企業の情報の把握が必要不可欠。しかし今の金融機関には難しい課題です。
逆に中小企業側からこの状況を見てみましょう。金融機関に事業性評価融資をしてもらいたい(担保や保証人なしの融資を希望する)企業は、こちらから金融機関に対して積極的に情報提供を行う必要があるのですね。
とはいえ、何をどこまで知らせてよいか迷うこともあるでしょう。「すべて正直に話すことで、悪材料まで知らせてしまうことになっても…」という心配をよく耳にします。
実は、金融機関が知りたい情報は、そう多くはありません。金融機関が知りたい情報だけを的確に伝えることができれば、あなたの顧問先企業も担保や保証人なしの融資をしてもらえる企業になります。
そんな、担保や保証人がなくても融資をしてもらうためのノウハウについてのヒントが手に入ります。
※融資に関する質問などにもその場でお答えします
ご参考までに以前、事業性評価融資について説明した過去のブログもご紹介しておきます。2016年という、かなり早い段階での記事でした。今読むと、ずいぶんくだけた文体ですね。(書いたのは私ではなく、弊社の編集です)
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