税理士のみなさん、確定申告お疲れさまでした。ほっと一息つける今、軽い気持ちで読んでいただきたい一本です。
こんにちは、ネクストフェイズ編集部です。以下、編集です。「へんしゅう」と読んでください。
先日たまたま、個人的な知人がお世話になっている税理士さんとお話しする機会がありました。編集にとっては、税理士業務を取材する大きなチャンスです。たいへんお忙しい時期だったのでイヤな顔をされながら(嘘です。快くお話しくださいました)、たくさん質問してきました。
今日の記事は、税理士業界では当たり前だったり、または「この税理士個人の考えに過ぎない」ことかもしれません。また他の士業・コンサルタントにとっては新鮮な情報でしょうけれど、日ごろの業務にどこまで関係するか…。
「業界では当然」「いや、一般的とはいえない」「自分は他士業なので、税理士さんとの関わりが薄くて…」などのご感想をお持ちになったら、そっと胸の内にしまいこんでくださったら幸いです(弱気)。でも、もしかして独立開業から間もない税理士には、「こういう考え方もあるんだ」と受け取っていただけるかもしれません。
また、個人事業主のみなさんにもご覧いただければ、とも思っています。たしかにいつものネクストフェイズブログは、士業・コンサルタント向けです。でも今回の記事で、個人事業主が、あるひとりの税理士の業務、考え方、気持ちの揺れなどに(にんげんだもの)触れるきっかけになればうれしいです。さらに、より建設的な「税理士との関係」を築く参考になれば、それ以上の喜びはありません。
質問①「確定申告時期、なんで税理士はそんなに忙しいんですか?」
お会いした税理士はAさん、従業員数名(正社員・パート含む)の会計事務所の所長です。繁忙期に、編集の多くの質問に答えてくださってありがとうございました。
でもなんでこの時期とくに、税理士は忙しいんですか? (編集は、税理士さんは節目が多くて年中お忙しそうな印象がある)
個人の確定申告は今のこの時期だけなので
ドーンと集中しやすいんです
なるほど。そういえば先日また別のB税理士さんと 飲んだ お話ししたんですが、「お忙しいときにすみません」と言ったら、「ウチは法人ばっかりなんで大丈夫です!」と爽やかな笑顔を向けてくださいました。
個人事業主だって
日常的に帳簿を
1年分の領収書をまとめて送ってくるから
忙しいのです
食い気味に言われました。そんなものなんですね。みなさん本業に忙しくて、帳面まではなかなか…。ちなみにAさんは、どんな業種の個人のお客さんが多いんですか?
開業医、美容師、飲食店オーナーなどですね
もしかしてAさん、記帳代行もしていますか?
通帳コピー/支払調書/領収書などを
まとめて送ってこられたりします
それを弊所で整理、入力して
申告書を作成する感じですね
お会いするのは決算時のみ、1年に1回です
自計化は?
もちろん自計化いただくほうが私も楽ですよ
でも
内容があてになるかといえば…ゴホンゴホン
あれ、Aさんたら急に咳が。
「つまりいくら自計化しても結局は税理士が」と言いかけたら、「それ以上はいけません」とばかりに手と目で制されました。
質問②「法人客と個人客、割合は?」
そうなると、法人客と個人客数、またその割合によって、この時期の忙しさが変わるんですね。みなさん、どれくらいの割合なんでしょうか。
あれAさん、咳はもういいんですか。ああそうですか、すぐ治まりましたね。
「9:1」で圧倒的に法人客が多いです
でも会計事務所それぞれですよ
「じゃあ売上の割合は?」とお尋ねしたら、約3%とのこと。この時期はたいへんな忙しさだと聞きますが、売上比が3%…。いろいろ考えてしまいそうですね。たとえば職場の労働環境とか。
今の労働環境は
マシになったといえるでしょう
とくに若い経営者は
freee(フリー)や
マネーフォワード(MFクラウド)などの
クラウド会計ソフトを上手く使いこなしている印象です
かつてAさんはご苦労なさった?
もう20年以上も前になりますか
まだe-tax(イータックス)もない時代
実際に税務署に足を運んで申告書を提出していたんです
それは初耳です…。
「儀式」のようなものでした
期日の3月15日は1日かけて
各所の税務署を回ります
多いときで7ヵ所ほどでしたか
実際に税務署に足を運ぶメリットはあったんでしょうか。
税務署員も忙しいですから
ごくたまにハンコの押し漏れがあって
それを現場でチェックできることくらいでしょうか
「今の労働環境はマシになった」とAさん。しかしどんなに技術が進歩しても、所長先生の意向が大きく反映されがちなのもまた事実で…と言いかけたらまたAさんは急に咳をして、「それ以上は」と手と目で(以下略)。
質問③「税理士側から解約ってわけにはいかないんですか?」
では、あまりに対応が難しい個人客なら、「税理士側からの解約申し出」もありえるんでしょうか。
2つの会計事務所に勤めましたが
どちらの所長先生にとっても
税理士側からの解約は
「ありえないこと」でした
顧問先が減るのが怖かった?
当時は税理士側から顧問契約を解除するなんて
ありえないのが当たり前の感覚だったかもしれませんね
顧客の流動性は今に比べて少なかったし
もちろん従業員や家族のことを考えたら…
では、独立後のAさんのお考えは?
業務量と報酬があわなければ
解約の検討を始めます
税理士側から顧問先に解約を切り出す基準は何かおありですか?
断る基準を複数持っています
急な対応が多いとか
法律的にグレー
またはブラックな節税を求められたり
あの、それはもしかして、だつ…
契約外の業務を
さも当然のように無料で依頼されたり
必要な資料を
なかなか出していただけなかったり
もちろんそれ以外にも
相性を重要視する税理士さんも
おられるでしょうね
相性は、意外に大切な要素のような気がします。結局「人・対・人」ですから。
従業員に迷惑がかかることを考えたら
難しいお客さんは
もうお断りするのがいいでしょう
そうですよね…。
会計事務所がブラックになりがちだったから
成り立っていた側面はあると思います
でももうそんな時代じゃない
人手不足は会計業界でも深刻です
どこでもそうなんですね。
ただし?
私はそこまで
ドライになりきれないこともあるんです…
従業員に無理はさせられないけれど
自分ひとりブラックで
何とかすることが
ない…とはいえない…
Aさん、セルフブラックですか…。お体どうぞ大事にしてください。急な咳とか。
申告を機に契約の見直しを
キレイにお別れしたいんです
だからこそ
もし今、個人のお客さまをお持ちで
業務量と報酬があわないと感じている若い税理士には
こうお伝えしたい
期中ではなく
申告時に
申告料をいただいてから終わりましょう
それが、あなたの税理士人生にとっても
もし従業員がいたらその方々にとっても
ベストな選択です、と
これは勇気の出る言葉です。
その気持ちはよくわかります
でも大丈夫
あなたと従業員が気持ちよく働けることが
結局はお客さまのためになり
その姿勢に納得する新しいお客さまを
お連れくださるでしょう
顧問料を払っているから、申告料を払うのだから、「何から何まで税理士に丸投げしていい」「資料提出が少しくらい遅れたって」と考える事業者は、経営者(法人)であれ個人事業主であれ、意外といるようです。
でも税務申告って、専門家の力を借りながら行っていく、共同プロジェクトなんですね。あくまでも自分の事業の申告ですから「お客さま気分」ではなく、専門家に気持ちよく動いていただくための協力は積極的に行いたいもの。今後の人材不足を考えると、今までのような対応では誰も請け負ってくれず「税理士難民」にもなりかねません。
また、よりよい関係のために税理士側でできることといえば、「顧問料に含まれる業務/そうでない業務」の明示でしょう。これはネクストフェイズが無料で配布している「税理士料金表サンプル」(ひな形、テンプレートとしてご利用いただけます)がお役に立てるでしょう。
すでに多くのご応募があり、今後の会計事務所経営の参考にしていただいています。まだの方はぜひ、こちらから気軽にお申し込みください。
一方、読者のなかには、「新しい税理士を探している」という事業者の方々がおられるかもしれません。融資・資金繰りに強い税理士なら、ネクストフェイズが運営する一般社団法人融資コンサルタント協会の会員検索ページから見つけてみるのをおすすすめします。