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なぜ日本政策金融公庫は創業融資を貸した後、新たに追加融資を申し込んでも貸してくれないのか?

公庫にも「暗黙の了解」や「不文律」というものがあるのです。

こんにちは。株式会社ネクストフェイズのヒガシカワです。

ネクストフェイズが運営する一般社団法人融資コンサルタント協会の会員士業・コンサルタントから、次のような相談をしばしば受けます。

会員士業
顧問先ではないのですが…

一般の事業者から問い合わせがありました

1年前に公庫で創業融資を借りた後
思うように事業が進まず

いま資金繰りが厳しいのですが
公庫に追加融資を謝絶されたとのことで
資金調達に困っておられます


 
資金調達を考えたとき、まず足を運ぶのが日本政策金融公庫でしょう。創業時に借りたのならなおさらで、「創業融資の次」の融資も…と考える経営者が多いと思います。

しかし残念なことに、創業融資を借りて3年も経っていない事業者が追加融資を借りようとしても、一部の例外を除き、公庫は貸してくれません。

ではなぜ日本政策金融公庫は、創業融資の「次」の追加(新規)融資に渋いのでしょうか。

※なおネクストフェイズは、事業者への個別アドバイスを行っていません。ご相談のある事業者は、ネクストフェイズが運営する一般社団法人融資コンサルタント協会の会員を検索して気軽に連絡を取ってください。融資の専門研修を受けた融資コンサルタントが、全国に900名以上います

公庫が創業融資後の追加融資に取り組まない理由

日本政策金融公庫が、創業融資の「次」の追加融資(新規の融資)を渋るのは、こんな不文律があるからです。

創業融資を行った先に対しては、半分以上返済が進まなければ新規融資に応じない

 
日本政策金融公庫での創業融資は多くの場合、運転資金なら5年返済、設備資金なら7年返済です。

半分以上返済が済むタイミングは、据置期間を設定しなかった場合、運転資金で2年半、設備資金で3年半。その間は新規融資に応じてもらえません。

この期間に公庫に融資を申し込んでも、「半分返済が終わっていないと、新規融資は難しいです」と、門前払いされるケースがほとんどです。

公庫の「不文律」の背景

一般的に「創業者の3割は1年以内に廃業し、5割は3年以内に廃業する」と言われています。
※以前も書きましたが、この説の確たる出典を、私は見つけることができていません。しかし実感としては、「そんなものかもしれない」です

融資判断の材料としては、創業時は「①自己資金」「②経験年数」「③創業計画書の内容」で行われます(一般的な融資と比較すると審査は甘めですが…)。しかし創業後6ヶ月を超えると、それらよりも「実績」を重視します。

創業から3年以内に融資を依頼する企業の多くは、「計画通り事業が進まなかった」ため、思うような売上や収益が確保できず資金繰りが悪化しているのです。

そのような企業への追加融資は金融機関にとってリスクが大きいため、決算書を見ただけで「追加融資はできません」と断ってきます。
 

公庫は追加融資を絶対に断るわけではない。例外はある

ただし、すべての企業が追加融資を断られるわけではありません。例外があります。

公庫が創業後の追加融資に応じやすいのは、以下のような事業者です。

業績が計画を上回り、売上が増えている。さらなる売上増加のために必要な、「増加運転資金」「設備資金」を求めている

 
売上や収益が計画よりも上回り、今後も伸びていく可能性が高ければ、公庫は低リスクと判断して融資に前向きに取り組んでくれます。
 

公庫に断られた後、民間金融機関に行っても貸してくれない

公庫に断られると、次に行くのは民間金融機関。しかしそれまでつきあいのなかった近所の金融機関に出向いて急に融資を依頼しても、まず断られます。

今までまったく取引がない事業者は、金融機関にとって「まったく情報のない相手」だからです。

●業種・規模など事業内容

●売上などの経営状況、財務状況

ビジネスモデルの堅牢性・将来性

●経営者の事業への考え方性格 など

 
このような情報のない中小企業が「資金繰りが苦しく運転資金を貸してほしい」と依頼しても、金融機関は「創業した事業がうまくいっていない企業」として高リスク先と見なします。

そんなリスクの高い、今まで知らなかった企業に貸さなければならない義務も義理もなく、融資に応じることはありません。
 

民間銀行から貸してもらえる/もらえない企業の違い

では、創業3年以内/低業績の企業が新規融資を得られないのかというと、そんなことはありません。

たしかに公庫なら、少なくとも半分を返済しないと追加融資には応じません。が、民間金融機関の場合、融資してもらえるように状況を変えることは可能です。

縁もゆかりもない中小企業がいきなり「融資してほしい」と金融機関に行っても断られますが、縁もゆかりもある中小企業なら、積極的に対処してもらえるのです。
 

金融機関との「縁」「ゆかり」、また「懇意にしている関係」とは

たとえば同じような2つの中小企業A、Bを想像してみましょう。A社・B社ともに創業3年目・経常赤字が続いています。

A社は、C信用金庫との取引はありません。

一方B社は創業時に公庫と同時にC信用金庫からも創業融資を受け、今も月に1度のペースで担当者が訪問してくるほど良好な関係が築けています。コミュニケーションが取れているので、担当者はB社の事業内容・業況をよく把握しています。

これら2つの中小企業がほぼ同時にC信用金庫に融資を申し込んだ場合、財務内容がほとんど変わらなくてもA社は融資を断られ、B社の案件は前向きに取り組んでもらいやすいのです。

なぜ、このように結果に差が出るのでしょうか? もう少し具体的に見てみましょう。
 

民間金融機関に「判断材料」を多く提供して「信用」を積もう

それは、金融機関にとって融資審査時の判断材料の差。

A社の融資審査を行うための判断材料は「財務内容(決算書・試算表)」しかありません。

それに対し、B社なら上記に加え、「事業内容」「事業の進捗状況」「法人の売上の推移状況」「法人取引以外の取引」「信用金庫に対する寄与度」「今後の事業の見込み」「将来性」「経営者の考え方・性格」など、数多くあるからです。

とくに重要視されるのが、信頼度。B社とは創業時から取引があり、金融機関での信頼度が高いのです。信頼度が高ければ、金融機関はその企業を何とか助けようと努力してくれます。

一方、これまでつきあいのなかったA社を助ける「義理」も「義務」も、C信用金庫にはありません。財務内容を見てリスクが高いと判断すれば、あえて火中の栗を拾いに行くような行為は、金融機関としては絶対にしません。
 

銀行からの信用は日ごろのコミュニケーションから

上でお話ししたとおり、事業者の業績が悪化し資金繰りが厳しくなれば、たいてい日本政策金融公庫に追加融資を申し込みます。

しかし前に借りたのが2年以内だったり(直近の融資からまだ2年しか経っていない)、融資枠いっぱいまで借りたりしている場合は、公庫は追加融資には応じません。

その時点で今まで取引のなかった民間金融機関を頼っても、期待する対応は得られないでしょう。一方、懇意にしている民間金融機関を確保していれば、何とか融資しようと努力してくれます。

民間金融機関から融資してもらえる事業者になるには、その金融機関との良好な関係を構築し、普段からコミュニケーションをとっておくことが重要です。


士業・コンサルタントの重要な役割のひとつが、「事業者が民間金融機関と良好な関係を構築する架け橋」になること。両者のコミュニケーションをサポートすれば、あなたが関与する事業者は、いざというときに取引金融機関から助けてもらえるようになるでしょう。

といっても、懇意にしている民間金融機関を確保できている事業者は、士業・コンサルタントが想像するよりずっと少ないものです。

「メインバンクがない」「近所の民間金融機関が融資に応じてくれない」と相談を受けたら、「これから懇意にする金融機関」の開拓からサポートしましょう。

そんな、事業者と民間金融機関の架け橋になれる士業・コンサルタントになるためのヒントが手に入ります。

※融資に関する質問などにもその場でお答えします

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