- 2015-5-11
- 士業インタビュー
- インタビュー, ネクストフェイズ編集部, 社長対談, 税理士
東京都墨田区で開業している税理士・猪田昭一(いのだ・しょういち)さんは、
独立3年目を迎えた29歳。
そう、まだ20代! しかも、もう独立3年目なんです。
営業は一切しないのに絶賛繁盛中というその理由を中心に、
ネクストフェイズ社長…というか、
今回はむしろ中小企業診断士としてのヒガシカワとご対談いただきました。
ユニークな仕事スタイル、金融機関との関係を作っていく方法、
関与先から融資相談を受けたら税理士的にどうなのとか、
専門家が知っておきたい各種の公的補助金、地域密着主義の貫きかた、
地元の士業ネットワークづくり、次世代を見据えた事業計画…などなど、
会話はまるでジェットコースターのようにスピーディでエキサイティング。
ふたりのお喋りをそばで聞いているような気になれる(ことを目指した)ライブな対談、
今回はたっぷり10回連載でお届けしましょう。
猪田さんが展開する内容の広さと濃さのおかげで、破格の読みごたえですよ。
【もくじ】
第1回 ほとんどの顧客が法人。個人さんは受けません。なぜなら…。
第2回 金融機関にとって「役に立つ」税理士。
第3回 地域の若手士業と、どんどん連携していきます。
第4回 顧客からの融資相談、コツさえつかめば難しくないのに…。
第5回 公的補助金申請のお手伝い、する? しない?
第6回 地場で連携して、この土地から新しいものを。
第7回 自治体訪問時に、みかん置いてきたりして。
第8回 税理士も、クリエイティブに。
第9回 次世代の経営者を育てると、自分も育っていく。
第10回 「すきま」は、つついていると広がる。
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第3回 地域の若手士業と、どんどん連携していきます。
東川 税理士のお客さんが、「しぼんでいく」?
猪田 お客さんって、3~5年で入れ替わっていくんですよね。税理士業態だけじゃないと思いますが、これから人口減っていくんですから、新規客をどれだけ作り続けるかが売上維持のポイントです。なので次を見据え、自分がトップに立って、診断士、社労士、行政書士、司法書士…という若手士業のネットワークを作ることを考えています。つながることで、お客さんや専門家同士との連携を保ちつつ、金融機関や、さっき話に出た墨田区といった行政機関との関わりも深めていくと。行政機関は、1回仲よくなると、おつきあいも長くなりますしね。今は「創業」というカテゴリのみですが、次は3年後ぐらいに、事業承継が来ると思っています。
東川 いやもう、今、事業承継かなり動き出しています。
猪田 国家予算は、来年以降かなと。
東川 たぶん今年もう予算ついていますよ。
猪田 「おいしい」のがあまりなくて。第二創業の補助金も微妙でしたよね。募集期間が半年しかなくて、「使える」補助金とは言いづらかったです。
東川 提携先の専門家さんは、すでにたくさん見つかっているんですか。
猪田 あえて人数は少なく、と思っています。相性の問題もありますけどね。「こんな面白いことやりたいんだけどちょっと協力してよ」って僕が頼んだときに「いいよ」って快く言ってくれる人限定。じゃないと、せっかく地域の中で僕が独立後3年かけて、「あいつ仕事ガツガツしなくて、相談ちょっと持ちかけるとメールすぐ返してくれて、別にお金じゃなくやってくれるから」みたいなブランドイメージみたいなのが消えちゃうので(笑)、「独立したんでガツガツいく」みたい士業は入れない。僕、今29歳で、今年30なんですけど、連携する士業の想定年齢層は、だいたい僕の年齢の前後10歳ぐらいかな。昨日、おとといは、150人規模のイベントを仕切らされて。
東川 何でまた。
猪田 昨日はお客さんのオープニング。飲食の手配は大半、僕ですよ。その前日は、「下町サミット 」って言って、地域の中小企業の社長が勉強しながら何か新しいこと始めようよという、交流会みたいなものですかね。それを「全部やっといて」って言われて(笑)。
東川 全部って(笑)。
猪田 一言だけですよ。「よろしく。全部やっといて」って言われて、おしまいです。
東川 で、全部やったわけですね。
猪田 行政に走って、会場に頭下げて、金融機関に走って、チラシ刷ってもらって、ウェブフォーム作って、当日の飲み物も、ごみ処理も、大半手配して。
●猪田さんが走り回った「下町サミット」HP。今後も多彩なイベント目白押しで楽しそう!
東川 猪田さん、イベンターですね。
猪田 プロのイベント屋さんと言われています。「あれ? 税理士やってたっけ」って言われるぐらい。
東川 税理士「も」やっています、みたいな。
猪田 自分としても、それぐらいがちょうどいいや、みたいな(笑)。4月は100人規模のバーベキュー、5月・6月も同じ規模の新しいイベントやって。でも、自分の宣伝は一切しません。
東川 宣伝するより、イベントの手配などやってる方が濃いつながりができるから、いざというときには安心して仕事を頼んでもらえるというものです。
猪田 イベントの事務局は、細かいことに汗をかきますよね。でもそこで一番いいのは、自分から名刺交換に行かなくても、キーマンが自分のところに、事務局に、見込み客を連れてきてくれることなんです。「こいつ困っているから、ちょっと名刺交換してよ」、「新しいこと始めるんだったら、こいつのとこ行きなさい」って。それがあって、最近はもう営業は一切しない(笑)。
東川 イベント事務局としての営業って、どんな税理士でもできる方法じゃないですけれどね。
猪田 そこです! 僕が創業に集中した理由は、実はそこなんですよ、これは誰でもできるわけじゃないって。みんなができることやっていると、結局値下げ競争じゃないですか、記帳代行して、税金申告しているだけだったら。どんな世界も一緒だけど、そんなんじゃ単価下がってきて、自分も値下げするしかない。
東川 そのとおりだと思います。
猪田 税理士を探すタイミングは3つあるんです。ひとつが、創業して商売始めるとき。何もわからないから総合的に聞きたいし、税金たくさんかかったら心配やなということ。2つめは、社長交替したとき。「じいちゃん何言ってるかわかんねえし、メールすらできねえ」みたいな(笑)。
東川 いまだに手書きでやってたりして(笑)。
猪田 3つめは、「払っている税理士報酬と受けているサービスの釣り合いが取れない」という不満が噴き出たとき。この3つが税理士探すタイミングってよく言われます。別に税理士だけじゃないんですけどね、本当は。とにかくこの3つの中でどこに焦点を絞っていくかというところで、僕は、創業だった。創業だと3人に1人ぐらいがちゃんと軌道に乗って、その軌道に乗れば5年じゃなく10年残るという感じです。
東川 2つめにおっしゃった、社長交替した企業を猪田さんが新規客として引き受けることは?
猪田 ありますよ。経理担当が次世代社長の奥様に替わったとき、「ああもう、試算表上がってこなくて困る」とかいうときだけ、スポットでお手伝いをするとか、コンサルだけさせていただいたりするとか。でも、先代のときの、お母さんの帳簿をデジタル化し過ぎると怒られたりしてね(笑)。
東川 さじ加減が(笑)。
猪田 一方、3つめの「今の税理士に不満があるから変えたい」という引き合いは、一切受けない。今の税理士がおじいちゃんすぎて、よっぽど何もしない人とかじゃない限りはね。だって現在の税理士に対する不満って、何かしら絶対あるんですよ。顧問料3万しか払っていないのに、あれもこれもやってほしいとか要求が高かったり。よくありますけどね、テレアポで。今の税理士さんに何か不満ありますかって。
東川 顧問税理士への不満なんて、ないはずないんですよ。
猪田 そうですよ。
東川 あと、税理士への大きい不満のひとつが、税務調査入ったとき何もしてくれへんかったという点。もうひとつは、融資の相談したのに税理士が答えてくれへんかったいう不満。このせいで税理士を変えたケースが多いんですよね。
猪田 そうそう、税務調査といえば…。
(次回に続きます)
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【もくじ】
第1回 ほとんどの顧客が法人。個人さんは受けません。なぜなら…。
第2回 金融機関にとって「役に立つ」税理士。
第3回 地域の若手士業と、どんどん連携していきます。
第4回 顧客からの融資相談、コツさえつかめば難しくないのに…。
第5回 公的補助金申請のお手伝い、する? しない?
第6回 地場で連携して、この土地から新しいものを。
第7回 自治体訪問時に、みかん置いてきたりして。
第8回 税理士も、クリエイティブに。
第9回 次世代の経営者を育てると、自分も育っていく。
第10回 「すきま」は、つついていると広がる。