- 2015-5-12
- 士業インタビュー
- インタビュー, ネクストフェイズ編集部, 社長対談, 税理士
東京都墨田区で開業している税理士・猪田昭一(いのだ・しょういち)さんは、
独立3年目を迎えた29歳。
そう、まだ20代! しかも、もう独立3年目なんです。
営業は一切しないのに絶賛繁盛中というその理由を中心に、
ネクストフェイズ社長…というか、
今回はむしろ中小企業診断士としてのヒガシカワとご対談いただきました。
ユニークな仕事スタイル、金融機関との関係を作っていく方法、
関与先から融資相談を受けたら税理士的にどうなのとか、
専門家が知っておきたい各種の公的補助金、地域密着主義の貫きかた、
地元の士業ネットワークづくり、次世代を見据えた事業計画…などなど、
会話はまるでジェットコースターのようにスピーディでエキサイティング。
ふたりのお喋りをそばで聞いているような気になれる(ことを目指した)ライブな対談、
今回はたっぷり10回連載でお届けしましょう。
猪田さんが展開する内容の広さと濃さのおかげで、破格の読みごたえですよ。
【もくじ】
第1回 ほとんどの顧客が法人。個人さんは受けません。なぜなら…。
第2回 金融機関にとって「役に立つ」税理士。
第3回 地域の若手士業と、どんどん連携していきます。
第4回 顧客からの融資相談、コツさえつかめば難しくないのに…。
第5回 公的補助金申請のお手伝い、する? しない?
第6回 地場で連携して、この土地から新しいものを。
第7回 自治体訪問時に、みかん置いてきたりして。
第8回 税理士も、クリエイティブに。
第9回 次世代の経営者を育てると、自分も育っていく。
第10回 「すきま」は、つついていると広がる。
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第4回 顧客からの融資相談、コツさえつかめば難しくないのに…。
猪田 僕が思うに、税務調査は、社長も一緒に謝ってくれればサクッと終わるものも多いんですけどね、でも難しいところがあります。社長が勝手に走っちゃったとか、事前に税理士に言っといてくれなかったことがあるとか。一方、融資の相談は、大きい税理士事務所なんかだと普段は職員さんが対応するでしょ。わかんないですもん、職員さん。
東川 職員さんはもちろんですが、基本的に税理士さん自身が、知らないんですよ。今、僕、「融資に強いFP・士業になる方法セミナー」やってるでしょ。税理士さん、けっこう来てくれるんです。で、「融資に強い」と自ら公言している税理士さんって100人中何人ぐらいいますか?って参加者に尋ねたら、みんな判で押したように「2、3人」って言います。
猪田 たとえ融資に強くても、わざわざそれを宣伝しないですからね。
東川 宣伝しないのもありますが、やっぱり自分たちがそういう実感があるんでしょうね、融資に強い税理士がおらん、という。僕も税理士さんと話していて、この人全然知らんなというケースがほとんどですわ。
猪田 でも融資って、コツさえつかむと別に…。
東川 そうなんです。たいして難しくない。
猪田 いつもやっていることに、ちょっとプラスするくらいですよね。たとえば関与先と話をしている中で、ちょっとヒアリング能力を高めて、「社長さ、いつもこれ言っているけどさ、じゃあ、今年の計画、売り上げ、去年と比べてむちゃくちゃ多いの? 少ないの?」みたいな話をするとか、まあ、特別そんなに…。
東川 難しくないんですよ、ほんま。ちょっとしたこと知っていたら。要は、銀行さんはどう考えているかというのさえ知っとったら、あとはもう関与先に毎月会うて、先月どないでしたって聞くだけでエエんで。
猪田 一番いいのは、仲のいい支店を作って、自分でがっちり捕まえとくことです。僕も仲のいい支店さんから最近言われるんですけど、「別にうちの銀行のことじゃなくていいんで、先生、困ったことあったら、もう何でもいいので私に聞いてください」って。そこまで信頼関係作れたのは、定期積金を毎月していたんですよ。
東川 定期積金! それはいい選択ですよ。毎月かならず顔をあわせるし。
猪田 僕、支店長のことは放置していて、課長さんとよく話していました。「賞与いつ?」「新規客の数は大丈夫?」とか。そのついでに「じゃあ、おやじ下にいるから、ちょっとおやじの口座作ってきて」とか、「別の金融機関の定期が満期きたんだけど、これ、いいから持っていって」とか(笑)。
東川 そりゃ金融機関さんも喜びますわ(笑)。
猪田 あとは、新規のお客さんを紹介したからかな。去年が創業ブームみたいな感じだったので、年間に20件ぐらい紹介したんですよ。創業者から「商売始めたら創業補助金を申請したい」って言われるんで、「じゃあ、あの銀行のあの支店で新規口座作ってよ」って言えるでしょ。その銀行に行って補助金のはんこもらうんだから。「その代わりあの支店、すぐOK出るよ」みたいな、創業者にとってお得な情報付きで(笑)。もちろんこちらが前さばきして書類も整えておくから、銀行ははんこ押すだけで済むんですけどね。
東川 創業補助金で、はんこを押さへん金融機関が多いんだよね。
猪田 しょうがないですよ。だって、創業者なんて銀行からしたら「知らんやつ」で、それがいきなり行って「はんこください」って、失礼だったりするので。たとえば僕らみたいな専門家が書類を整備して、しかもそれを口座開設する前に済ませておいたら、そりゃ金融機関だってすぐはんこ押してくれる(笑)。支店の営業実績も上がるし。
東川 僕もそれが一番手っ取り早いと思うんだけれど、そこまでできる、あるいはやろうとする専門家は、なかなかいませんね。
●「専門家は今の知識に少しプラスするだけで、金融機関と経営者の、もっと優れた橋渡し役になれますよ!」(東川)
猪田 創業補助金って結構スピード命でしょ。だから金融機関にも事前にいろいろ準備をお願いしておくんです。何件くらい紹介できそうだから、書類はこれくらい要りそうだとか、あらかじめ知らせて。
東川 創業者のお客さんを増やしていかんとアカンということに、金融機関も気がつき始めてますしね。
猪田 たましんとか。
東川 たましん、結構、創業やってますね。自前のセンター持っているんですね、確か。
猪田 持ってますし、常駐もさせてますし、通いもしているし、「東京西側で商売始めるなら、たましんに行け」と言うらしいですよ、創業者のあいだでは。まるでキャッチコピーみたいに。
東川 いいコピーだ(笑)。
猪田 というか、創業者側が、勝手にそう言っているらしいんです。創業の窓口もあるし、何件も取り扱っているからノウハウあるし、補助金むちゃくちゃ通しているし。
東川 そんな金融機関がある一方、これは一般的な話なんですが、創業ということに対する勉強をほとんどしていない金融機関も多いですよね。本当、公的支援策を全然知りませんから、銀行は。だから僕ら専門家としては、金融機関に対して創業者向けの公的支援策を教えるとこから始めんとアカンですよね。
猪田 新しい制度が出ると僕、支店の営業課、融資課に「この制度を使うと、負担が減りますよ」と提案します。まあ最終的には、「だから、僕に好き勝手使わせなさい」という話になるんですが(笑)。だって支店長大変だし、融資課の課長も早く帰らせてあげたいから、「これ、僕に使わせて」って(笑)。
東川 そうそう、金融機関の情報収集力といえばですね、たとえば…。
(次回に続きます)
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【もくじ】
第1回 ほとんどの顧客が法人。個人さんは受けません。なぜなら…。
第2回 金融機関にとって「役に立つ」税理士。
第3回 地域の若手士業と、どんどん連携していきます。
第4回 顧客からの融資相談、コツさえつかめば難しくないのに…。
第5回 公的補助金申請のお手伝い、する? しない?
第6回 地場で連携して、この土地から新しいものを。
第7回 自治体訪問時に、みかん置いてきたりして。
第8回 税理士も、クリエイティブに。
第9回 次世代の経営者を育てると、自分も育っていく。
第10回 「すきま」は、つついていると広がる。