- 2015-5-14
- 士業インタビュー
- インタビュー, ネクストフェイズ編集部, 社長対談, 税理士
東京都墨田区で開業している税理士・猪田昭一(いのだ・しょういち)さんは、
独立3年目を迎えた29歳。
そう、まだ20代! しかも、もう独立3年目なんです。
営業は一切しないのに絶賛繁盛中というその理由を中心に、
ネクストフェイズ社長…というか、
今回はむしろ中小企業診断士としてのヒガシカワとご対談いただきました。
ユニークな仕事スタイル、金融機関との関係を作っていく方法、
関与先から融資相談を受けたら税理士的にどうなのとか、
専門家が知っておきたい各種の公的補助金、地域密着主義の貫きかた、
地元の士業ネットワークづくり、次世代を見据えた事業計画…などなど、
会話はまるでジェットコースターのようにスピーディでエキサイティング。
ふたりのお喋りをそばで聞いているような気になれる(ことを目指した)ライブな対談、
今回はたっぷり10回連載でお届けしましょう。
猪田さんが展開する内容の広さと濃さのおかげで、破格の読みごたえですよ。
【もくじ】
第1回 ほとんどの顧客が法人。個人さんは受けません。なぜなら…。
第2回 金融機関にとって「役に立つ」税理士。
第3回 地域の若手士業と、どんどん連携していきます。
第4回 顧客からの融資相談、コツさえつかめば難しくないのに…。
第5回 公的補助金申請のお手伝い、する? しない?
第6回 地場で連携して、この土地から新しいものを。
第7回 自治体訪問時に、みかん置いてきたりして。
第8回 税理士も、クリエイティブに。
第9回 次世代の経営者を育てると、自分も育っていく。
第10回 「すきま」は、つついていると広がる。
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第6回 地場で連携して、この土地から新しいものを。
東川 独立開業してから苦労したこととか、おありなんじゃないですか。
猪田 うーん、苦労したのは、何だろう。ああそういえば、「つらいとか思っても、楽しもう」と思うようにしていますね。そのつらいことを受け入れ、どう捉えるかだよねって。僕も人の文句は言いますけど(笑)、翌日に忘れようと思う。引きずっていてもしょうがないし、全部笑い話にして、セミナーのときとか、お客さんとかに、笑い話のネタにする(笑)。
東川 私も同じです(笑)。
猪田 じゃないともう、よくも悪くも、スタッフ雇っているわけじゃないので、常駐でいたら余計によくないでしょうけど、お客様に会うにしても、いらいらしている顔で会ってもしゃあないし、いいことないので、とにかく忘れるか、楽しくやる。飲みに行ったりもしますし、夜な夜な1人で異常なほど酒を飲んで、翌日後悔するけれど、でもそれで済ませるようにしています。とにかく笑いに持って行く、ネタにするようにしていますね。
東川 一方、独立後に変化したことは?
猪田 独立前の自分を知っているお客さんや知人・友人からは、「視点が変わった」と言われます。以前は「この一点!」を集中して見ていたけど、独立してから「その周辺」を見るようになって、最近は「全体」かな。
東川 俯瞰で見るという感じ?
猪田 視野とか視座とか、そのあたりでしょうか。また、自分で感じる独立後の変化は、売上に対する考え方。まず、「売上を上げようとして焦らない」ということ。独立して、今は結婚して子どもも生まれましたけど、共働きということもあって、そんなむちゃくちゃ稼がないといけないわけじゃない。税理士って稼ごうと思えば稼げるでしょ。でも「今すぐ、たくさん!」ではなく、「安定した長期的収入」を考えるようになったということです。安定売上といっても、さっき話したようにそんなもの絶対しぼんでいくから、常に新しい売り上げを作るように新規顧客の獲得を考え続けていますよ。だからお客さんからもそういう、長期的な視点で話がくるんですね。これからの新規事業のアイデアを一緒に相談したりとか。ま、相談って言っても飲みに行くだけなんですけど。
東川 (笑)
猪田 「相談したいから、ちょっとどこか行こう、予約してきて」って言われたりして。僕は「美味しいものを食べる」ということを大事にしているんですが、税理士で大事なことのひとつは、「紹介される」ことだと思うんですよ。
東川 紹介はすごく大事ですね。
猪田 で、紹介で会う初回って、「一緒に飯食いに行こうよ」というのが結構多いでしょ。
東川 多いです。←きっぱり
猪田 で、僕の場合、「こいつと行くとうまいもの食えるから」とかって意味わからない紹介が、すごいあるんですよ(笑)。
東川 紹介の切り口としては新しいですね(笑)。
猪田 僕、新規のお店があると全部行くんですよ。墨田区内と言うか、僕のテリトリー、事務所近辺の、結構狭い範囲ですが。し。
東川 どんなお店に?
猪田 まず、チェーン店は行かない。常連が行くようなお店です。でも予約はしません。予約の取れるような店は、自分では行かないんです。そこにメニューにないもの勝手に持っていって、「これ持ってきたから置いといて」って(笑)、ボトル3本ぐらい置いて行ったり。予約の取れないようなお店で、そんなの誰もやらないんですけど。あと、食材も勝手に持ち込んで、「今日これ出して」って言って。怒られるんですけど(笑)。
東川 そりゃ怒られるでしょう(笑)。
猪田 でも「食べよう」ってなるんですよ。「じゃ調理は俺やるよ」とか言って、自分でやったりしてね。普通の人じゃできないことですよね。そうやって予約が取れない店でも直通のパイプを確保できるようになったら、すでに予約が入っていても僕が電話したら席を空けてくれるようになりました。2席とか3席とか少しですけどね、「ちょっと悪いんだけど、お客さんに言われちゃったから空けてや」と言うと、「いいよ」って。
東川 それくらいの関係を作るまでに、どれほど時間かけた?
猪田 3カ月。一番行っていたころは、毎週お客さんに毎週予約させられて、10人以上で金曜日に(笑)。2カ月ぐらい毎週予約して通ってカレンダー全部埋めて、周りから笑われました。でもね、そういうのを続けていると、地域の企業の社長とかから、「あの店、いちどお客さんと行ってみたいから、ちょっと紹介してや」って声をかけてもらえるようになるんです。
東川 店の方も嫌な気しませんしね。「連れてきたい」って言われたらね。
猪田 あと最近は、商店街の方とかもつながろうとしています。僕、毎月100人規模のイベントを仕切らされているんですが、たとえば酒屋さんに対してだと、100人規模だから同じもの30本とか頼むし、酒屋さんも卸から直接引けるということで、「残っても全部引き取るから大丈夫ですよ」って無理を聞いてくれるようになるんです。そこまでやると次は、その酒屋さんが見込み客の話とか紹介してくれたりとかね。
東川 それはありますよね。地域の酒屋さんとか、肉屋さんとか。
猪田 あと、印刷屋さんも。
東川 そうか、地元の印刷屋さん!
猪田 金属とかプラスチックって軽いから送りやすいでしょ、だから工場が中国に行ったりしたじゃないですか。でも印刷物ってやっぱ大ロット以外は、まだ東京にあるんですよ。送料があわないから。つまり、印刷屋さんは地場に残ってるんです。で、地場の地域密着だから、印刷屋さんは地場の情報を金融機関並みに持ってるんじゃないかと昨日話していて、次は印刷屋さんと新しいことをしようかと。
東川 けっこう地場のお客さんとかいますからね、印刷屋さんは。
猪田 僕などが持っている金融など新しいこと始めるための知識、そして印刷屋さんのネットワーク、そういうのを組み合わせたりしていくと新しいものがまた生まれてくるんじゃないかと。実は、新しいシェアオフィスみたいなのをオープンしたので。
東川 シェアオフィス?
猪田 このたび施設がオープンしたんです。墨田区さんから補助金いただきまして。
東川 おー! おめでとうございます。
猪田 2000万円。10分の10。。
東川 10分の10だったんですか!
猪田 設備全部、墨田区が出してくれるって。ありがたいですね。おかげできれいな施設ができました。楽しくやっています。co-lab(コーラボ) さんってご存じですか。クリエイター専用のシェアオフィスみたいなのやっているんですけど、その墨田区版がco-lab墨田亀沢 です。ぜひご覧ください。
東川 クリエイター専用って面白いですね。ぜひ直接お伺いしたいです。ところで先ほど、税理士に大事なのは2点あると。一つは、紹介されること。ふたつめは?
猪田 税理士に大事なことのふたつめは…
(次回に続きます)
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【もくじ】
第1回 ほとんどの顧客が法人。個人さんは受けません。なぜなら…。
第2回 金融機関にとって「役に立つ」税理士。
第3回 地域の若手士業と、どんどん連携していきます。
第4回 顧客からの融資相談、コツさえつかめば難しくないのに…。
第5回 公的補助金申請のお手伝い、する? しない?
第6回 地場で連携して、この土地から新しいものを。
第7回 自治体訪問時に、みかん置いてきたりして。
第8回 税理士も、クリエイティブに。
第9回 次世代の経営者を育てると、自分も育っていく。
第10回 「すきま」は、つついていると広がる。