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金融機関側にはハードルがありますが、それを乗り越える対策もお話ししましょう。法人にとってメリットの大きい制度ですので、士業・コンサルタントのみなさん、ぜひ周りの経営者にお伝えください。
こんにちは、株式会社ネクストフェイズのヒガシカワです。
2024年3月15日の中小企業庁ニュースリリースで、「事業者選択型経営者保証非提供制度」と「事業者選択型経営者保証非提供促進特別保証制度」の創設が公表されました。
●保証料率の上乗せにより経営者保証を提供しないことを選択できる信用保証制度等を開始します(中小企業庁ニュースリリース)
なお「事業者選択型経営者保証非提供制度」と「事業者選択型経営者保証非提供促進特別保証制度」については、過去のブログで解説しています。
このニュースリリースで、もう一点とても重要な制度の創設も公表されています。今日はその「プロパー融資借換特別保証制度」と、利用例を解説しましょう。
※なおネクストフェイズは、事業者への個別アドバイスを行っていません。ご相談のある事業者は、ネクストフェイズが運営する一般社団法人融資コンサルタント協会の会員を検索して気軽に連絡を取ってください。融資の専門研修を受けた融資コンサルタントが、全国に1,000名以上います
まずプロパー融資とは、金融機関が独自で行う、信用保証協会の保証を付さない融資です。
信用保証協会の保証がついている融資は、融資先が返済できなくなっても信用保証協会が代位弁済(80%もしくは100%)してくれるので、金融機関にとって低リスクといえます。融資を申し込むと多くの金融機関が信用保証協会の保証つき融資にしたがる傾向が強いのは、そのような理由です。
それに対しプロパー融資は金融機関が100%リスク負担しなければならないため、その保全のため経営者保証を徴求するケースが少なくありません。
今回発表の「プロパー融資借換特別保証制度」は、既往のプロパー融資(経営者保証あり)から信用保証付き融資(経営者保証なし)への借換を認める保証制度。2027年3月31日まで、時限的に創設されています。
以下の全ての要件を充足する法人
① 資産超過であること
②EBITDA有利子負債倍率(*1)が15倍以内であること
③ 法人・個人の分離がなされていること
④ 申込日(*2)において返済緩和している借入金がないこと
(*1) EBITDA有利子負債倍率=(借入金・社債-現預金)÷(営業利益+減価償却費)
(*2) 危機関連保証又はSN保証4号(新型コロナ)の指定期間内の場合は、指定期間の始期の前日でも差し支えない。
申込金融機関における保証協会の保証を付さない借入(プロパー借入)のうち、経営者保証を提供している事業資金の借り換え資金
2億8,000万円
申込金融機関における保証限度額は、プロパー融資のうち、経営者保証を提供していない残高の範囲内。
(1)一括返済の場合:1年以内
(2)分割返済の場合:10年以内(据置期間は1年以内)
保証料率 0.45%~1.90%
保証人 不要
取扱期間 2027年3月31日まで
この制度の利用には、申し込む法人側、金融機関の側、それぞれにハードルがあります。
経営者保証を解除できるのは大きなメリットですが、デメリットもあります。それは、保証料の発生。上記のとおり、保証料率は0.45%~1.90%です。
これまでの融資の経営者保証を解除する代わりに、保証料を積まないといけません。しかも一括払いです。債務額、保証料率、また資金繰り状況にもよりますが、厳しい企業もあるでしょう。
すべての企業に適した制度ではないことを、支援する士業・コンサルタントとして肝に銘じておきたいものです。
本制度を利用するとき、金融機関は次のいずれかの要件を満たす必要があります。
(1)経営者保証を提供せず、かつ保全のない保証協会の保証を付さない借入(プロパー借入)を借り入れること。
(2) 本制度による返済部分を除く保証協会の保証を付さない借入(プロパー借入)の全部または一部について経営者保証を解除し、かつ解除した借入について保全がないこと。
この制度を利用する場合、金融機関は「経営者保証免除のプロパー融資を同時に実行」するか、「既存のプロパー融資の経営者保証を解除」しなければなりません。
これだけだとわかりにくいと思いますので、適用する例をいくつか挙げましょう。あくまで例ですので、このほかにも出口が考えられます。いずれも現在の融資には経営者保証がついていると仮定します。
A社 | B社 | C社 | |
現状 | ●A信金 プロパー融資 600万円 | ●B信金 プロパー融資 500万円 ●B信金 プロパー融資 100万円 | ●C信金 プロパー融資 500万円 ●C信金 プロパー融資 100万円 |
適用例 | 1/既存プロパー融資600万円を、経営者保証のないプロパー融資特別保証で借換 + 2/新規プロパー融資100万円(経営者保証免除)を実行 | 1/既存プロパー融資2本を合算した600万円を、経営者保証なしのプロパー融資特別保証で借換(一本化) + 2/新規プロパー融資100万円(経営者保証免除)を実行 | 1/既存プロパー融資500万円を、経営者保証のないプロパー融資特別保証で借換 + 2/プロパー融資100万円の経営者保証を解除 |
現状との違い | ●経営者保証なしになる ●債務が700万円になる (現状+100万円) | ●経営者保証なしになる ●債務が700万円になる (現状+100万円) | ●経営者保証なしになる ●債務は600万円のまま |
「経営者保証免除のプロパー融資を同時に実行」するか、「既存のプロパー融資の経営者保証を解除」するか。
このように金融機関には高いハードルがあるため、たとえ経営者が「保証料を積んでも経営者保証を解除したい」と考えても、積極的に取り組んでもらえない可能性が大いにあります。しかし法人側にも、試す価値のある対策があります。
金融機関側にはメリットの少ない本制度ですが、唯一あるとすれば「融資残高が増える」(こともある)点です。
現在の金融機関は預金高を増やしたがっていますが、同時に融資残高も増やしたい。その評価が決まる決算期、3月・6月・9月・12月のころに本制度の話を持ちかけるのは一案です。とくに3月・9月は、ひとつのチャンスと言えそうです。
「つきあいがあるのは、メインバンク1行だけ」。そんな中小・零細企業も多いでしょう。そんな顧客を持つ士業・コンサルタントは、ぜひ経営者に「別の金融機関に話を持ちかけてみましょう」とアドバイスしてみてください。
もちろん今までおつきあいのない金融機関ですし、発表から間もない制度ですので、最初は「?」という反応かもしれません。しかし相手も金融機関、(預金はもちろん)融資の新規取引を求めています。なかには「新規の融資取引」を重要視し、積極的な姿勢を見せる金融機関もあるでしょう。
①上記の制度を利用したいこと、②そのために初取引の法人としてどうすればいいか(口座開設、定期積金など定期的な取引、提出書類など)を、謙虚に話しましょう。
礼儀をもって接すれば、「新規の融資取引」を重要視して積極的な姿勢を見せる金融機関もあるでしょう。
②のようにいきなり近隣の金融機関支店に向かうのもよいのですが、そこがプロパー融資の経営者保証免除や解除に消極的なら、前向きに対応してくれるかどうは懐疑的です。
それなら最初から、「プロパー融資の経営者保証免除や解除に積極的な金融機関を見つけて取引を始めるのが、遠いようで、いちばんの近道だといえるでしょう。
プロパー融資の経営者保証免除や解除に「積極的な」金融機関なら、プロパー融資借換特別保証制度を利用した肩代わりに積極的に取り組んでくれるため、経営者保証を外すことができるでしょう。
また、新しい銀行と関係を作れたら、プロパー融資の経営者保証免除や解除に「消極的な」金融機関に「別の金融機関が、プロパー融資借換特別保証制度を利用して御社の融資を肩代わりしてくれるとのことで…」と伝えることができるでしょう。こうなると既存の金融機関は預金残高が減るのを恐れ、(たとえしぶしぶでも)取り組んでくれる可能性が上がります。
新たに融資してくれそうな金融機関を開拓する方法は、以前のブログをご参照ください。
経営者の75%は、「経営者保証を外したい」と考えています。
しかし「事業者選択型経営者保証非提供制度」「事業者選択型経営者保証非提供促進特別保証制度」「プロパー融資借換特別保証制度」などの制度を知っている事業者は、全体の半分程度。
残り半分の経営者は、これらの制度を知りません。このような情報の提供だけでも喜んでもらえると思いますが、そのうえで「経営者保証を外すためのお手伝いをしましょうか」と提案すれば、興味を持つ経営者もいるでしょう。
そんな「経営者保証を外すサポート」ができる士業・コンサルタントになるためのヒントが手に入ります。
※融資に関する質問などにもその場でお答えします
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