東京都豊島区で開業している税理士、西守正希さん(37歳)。
当初から創業支援を大きく掲げ、順調に業績を伸ばしておられます。
独立3年目ながら、そのビジネスモデルや事務所経営手腕の、まあ見事なこと。
開業前から固めていたビジョン、気になる料金体系、人材採用の試行錯誤、
職員さんの給与システム(驚き!)など、細かくお尋ねしてきました。
聞き手は、ネクストフェイズ編集部です。
ところどころ、同席していたネクストフェイズ代表・東川も入ってきますよ。
というわけで、
推定全国100万人の士業インタビューシリーズファンのみなさま、
前回掲載から長らくお待たせしました。
今回もいつもと変わらず、5回連載でお送りします。
【もくじ】
第1回 創業者に月額3万も4万も請求できない。だから…
第2回 会計事務所の料金表に、柔軟性を
第3回 会計事務所の人材採用、工夫のしどころ
第4回 創業支援税理士に必要な「法人税務以外」の知識
第5回 若手税理士におすすめ!顧客獲得の具体策
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第3回 会計事務所の人材採用、工夫のしどころ
西守 独立して一番の心配は、売り上げが安定するのかというところですよね。だから私、人を採用するという方向性をあまり考えていなかったんです。結局すぐに採用することにはなりましたが…。
―― が…?
西守 私が倒れたころ、すでに社員は二人いたんですけれども、お客さま対応ではなく、どちらかというと内部で入力をやってもらうための人員だったんです。
―― ああ…。
西守 たとえば新規のお客さまと取引を始めたりしますと、その方をご紹介くださった方に対するきちんとしたお礼や進捗報告なども、通常の業務に加えて必要になってきますよね。ですが、その当時、社員にはそういったお客さま対応をお願いしておらず…。で、私が手一杯になってしまいました。完全にキャパオーバーでしたね、あの当時は(笑)。
―― それで倒れてしまったと。(また西守さん、さわやかに笑っておられる…)
西守 そして、その段階から、お客さま対応ができる人員をどんどん増やしていったんです。
―― 「人」に費用をかけようと、そちらの方向に転換なさった。
西守 はい、先行投資です。当初は、資金繰り的にかなりキツキツの状況でしたからね。それこそ、当時から創業融資サポートを行えていれば、もう少しラクだったのに(笑)。
―― その先行投資の額、かなり思い切った投資額でしたか、ご自身にとって。
西守 私にとってはそうですね。さすがに人材紹介には頼むお金なかったので。
―― ああ、人材紹介と広告出稿を比べると…。
西守 人材紹介だと年収の何割かの費用がかかると聞きますね。となると、100万とかすぐ飛んでいっちゃいます。なので、会計事務所などに特化した媒体に求人広告を出して。今も募集しているんですよ。※2016年7月現在
●事務所も広がり、2016年末までにさらなる増員を計画中。
業務はもちろん、お客さまへのトータルなコンサルティング力、さらに事務所経営も学べます
―― 具体的にどういう業務をお願いする人を募集するんですか。たとえば、月次にも行ってもらうとか?
西守 はい、月次にも行っていただきます。すべてやっていただく感じですね。申告書も作っていただきますし。
―― とはいえ、税理士資格にはこだわらない?
西守 こだわりません。合格を目指して勉強中とか、科目合格者とかも多いですね。
―― 月次に行ってもらったり申告書も作ってもらうとなると、内部の事務員よりも給与が高くなりますよね。
西守 ええ、実は正社員のお給料も、お客さまからいただく報酬に比例するシステムにしています。弊所は一部、成果報酬を採り入れているので。
―― 会計事務所で、成果報酬?
□ 職員のスキルやモチベーションアップのために
東川 うんうん、従業員給与に成果報酬を採用している税理士事務所、あるよ。でもそれはたいてい、新規客を取ってきた数に対してですよね。で、そもそも顧問料を値上げするっていう発想が、税理士にはあんまりないでしょ? でも「お客さまの売上アップ→値上げできる」という仕組みが西守さんところには完成しているから、「担当者ががんばった分を本人の収入に反映させる」ことができるんやね。こんなにうまくシステムが組めている事務所、ほとんど聞いたことないです。
西守 ありがとうございます。逆に言うと、「私だけができる事務所」じゃ、しょうがないんですよ。職員もモチベーション高く頑張ってもらえるからこそ、多くのお客さまに対してきめ細かいサポートを続けていけますからね。
□ 「即戦力の採用」でいいの?
―― 採用活動の後、教育したり、定着してもらう工夫は?
西守 私もまだまだ勉強中です。一時はなかなか難しくて(笑)。
―― 料金表も、給与システムも、こんなに整っている西守さんのところでも?
西守 理由は明確です。当時、私があまりにも忙しくて、なかなか事務所にいられなかったんです。
―― 所長先生、出っぱなし(笑)。
西守 出っぱなし(笑)。当時はやむを得なかったんです。でも先ほども申し上げたように、先行投資して、お客さま対応できる人員を増やして、私がなるべく事務所にいるようにしています。これで、育てる時間も、コミュニケーション取る時間も取れるようになりました。
―― ようやく余裕が。
西守 ええ、まだ採用に慣れていないころは…、いえいえ、今も偉そうなことは言えませんが(笑)、教育する時間が十分に取れないからといって、つい即戦力を求めがちです。しかし、それでいいのかな、と考え始めているんですよ。
―― というのは?
西守 すぐにでも実務をこなしてくれる経験豊かな人員だと、仕事に対するスタンスや考え方がある程度ご自分のなかで確立されておられたりすることもあり…。
―― 経験が長いだけに。
西守 本来は、うちの事務所のスタンスや理念を理解していただいて、同じ方向を見て進んでくださる方を採用すべきなんですよね。
―― 本来は。
西守 ええ、そうすべき…、ではあるんですけれど、それはわかりつつも(笑)、難しいところがあって、もう目の前の業務負担をいかに減らすかを優先しがちなんです。
東川 ほしい人材を採用しよう思ったら、余裕のあるときじゃないとアカンね。
西守 そうなんです。今ようやく少しその余裕が出てきたかなというところです。
―― 税理士のみなさーん、事務所の人材募集はお早めに!
西守 それに税理士業って、優秀な人材を採用できるタイミングって、結構限られるんですよ。
―― いつごろ募集するのがいいんですか?
(第4回につづきます)
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西守正希税理士インタビュー <全5回>
「創業支援・コンサル型の税理士、生き残り方法は?」
【もくじ】
第1回 創業者に月額3万も4万も請求できない。だから…
第2回 会計事務所の料金表に、柔軟性を
第3回 会計事務所の人材採用、工夫のしどころ
第4回 創業支援税理士に必要な「法人税務以外」の知識
第5回 若手税理士におすすめ!顧客獲得の具体策
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☆西守さんが実際に手がけた融資事例を、融資コンサルタント協会サイトにアップしています。ぜひあわせてご覧ください。
●融資コンサルタント協会→融資事例→「補助金の採択歴が…」