東京都葛飾区に事務所を構える行政書士、富井禎文(とみい・よしふみ)さん(54歳)。
20年以上も勤務した資産家向け相続対策専門コンサルティング会社を辞め、
2013年、50歳のとき、行政書士資格の取得後すぐに独立開業しました。
長年の経験を活かした不動産関連を中心とする業務には、
金融機関との連携が必須だと、独立当初から考えておられたそうです。
そこから「士業と金融機関の連携」を推進するネクストフェイズとご縁が生まれ、
今回のインタビューにつながりました。
実際に金融機関から顧客の紹介を受けている富井さんから、
毎月実践しておられる金融機関への訪問の詳細、リアルな集客方法、
行政書士ならではの事情を踏まえた若手のみなさんへのアドバイスなどをお聞きし、
いつものように5回連載でお届けします。
聞き手はネクストフェイズ編集部ですが、
今回も取材に同席していたネクストフェイズ代表・東川がときどき発言しています。
富井禎文さんプロフィールはこちら
富井禎文行政書士インタビュー <全5回>
「行政書士×金融機関、仲よくなるコツは?」
【もくじ】
第1回 銀行訪問は月に1日、9店舗まとめて
第2回 士業との連携を求め始めた金融機関
第3回 金融機関訪問を継続させるポイント
第4回 集客はWebじゃなく、リアルで
第5回 行政書士よ、事務所を出よう
【第2回】士業との連携を求め始めた金融機関
富井 2015年の秋に金融機関へ行き始めたとき、「士業との連携を強めようとしている」という実感はあまりありませんでした。外部の専門家を活用する傾向が感じられるようになったのは、その半年後、2016年の春ぐらいからですかね。
―― ちょうど1年前ですね。
富井 何となく雰囲気が軟らかくなったというか、そういう感じはありましたね。でもそのときは、行き始めてから半年ぐらい経ったから、そのせいでちょっと愛想よくなってくれたのかな、なんて思っていました。具体的に顧客をご紹介いただいたのは、さらにその半年後です。
―― 現在も、別の顧客のご相談を受けておられるんですよね。
富井 はい。多くの金融機関とつきあっていると、それだけ多くの情報が集まりますしね。だって最初はわからないじゃないですか、どこが・誰が、当たりなのか外れなのかって。
―― たくさん訪問して、いま少しずつ結果が出始めていると。
富井 はい、先日は、いつも訪問している金融機関から、「支店同士で専門家を紹介しあう枠組みのネットワークを内部で作るので、富井さんを登録させてほしい」と言われましたので、ぜひ!と。
―― いい結果ですね! もしこれから金融機関訪問を始める人にアドバイスするとしたら?
富井 うーん、「自分の話は、意外と伝わっていないと思った方がいい」ということかな。
―― というと?
富井 「行政書士って何をやる人?」というところから話が始まるんです。私の場合は行政書士の中でも行政書士っぽくないことばっかりやっているから、なおさらわかりづらいというところがあって(笑)。
―― そういうときは?
富井 自分の名刺とチラシをお見せしながら、「自分には何ができるか」をお話ししています。
●富井さんが金融機関訪問時にお持ちする、詳細なチラシ。また、名刺の裏面には、そのダイジェスト版を掲載
何度も会おう、表現を変えてみよう
富井 それでも、すぐにはご理解いただけないですね。だから、何度もお会いするのも大切だし、表現を変えて、違う言い方で伝えるということも大切です。金融機関の職員もお忙しいですから、じっくり真剣に話を聞くわけにはいかないときがあります。「自分が帰った2分後にはもう忘れられているかもしれない」くらいのつもりで行くといいですよ。
―― そもそも、1回の訪問時間は?
富井 それね、そんなに長い時間喋るわけにはいかないから、何か「モノ」をおいてくるしかないんですよ。
―― モノ?
富井 私は「お役立ちレポート」を作って持って行っています。不動産全般についてや、地主さん・借地人さんに有益な情報、遺言・相続関連などについての内容で、自分はこの分野が得意です・先月こんな事例を手がけました、みたいなことをご理解いただけるようなものです。
●富井さんが金融機関訪問時に毎回お持ちする、自作の「お役立ちレポート」。
不動産、相続・遺言関連の情報をはじめ、自分の仕事・解決事例を掲載
1件あたり2~3分の会話
―― 毎月の訪問時の、お土産のようなものですね。
富井 はい、手ぶらで行くわけにもいかないので。
―― 金融機関の反応は?
富井 だいたいは「そうだよね」「なるほど」とおっしゃっていただけます。というのも、私が活動している東京都葛飾区って地主さんが多かったり、借地も多いんですよ。個人の高齢者が多い地域ですし。
東川 この「お役立ちレポート」をお渡しするのは、金融機関だけ?
富井 保険営業さん、他の士業さんとかとも、そういう話し合いをしたりしますね。
―― 金融機関では、これで1件あたり何分ぐらいお話をなさいます?
富井 金融機関には、「置いてくる」くらいですよ。ちょっと話ができれば、2~3分くらいでしょうか。
―― 1件あたり2~3分!
富井 先方にお時間があって「ちょっと話を聞こうか」という姿勢だったり、何か案件があって「話したいことある」といったときは、もちろん5分でも10分でも話すケースはあるけれど、そうじゃないときは「私はこんなこともしています、読んでください」という程度です。
東川 滞在時間は、それぞれの金融機関のスタンスや、そのときの相手の状況にもよると思うよ。ケースバイケースやと思うね。
―― こういう活動を続けるうち、金融機関から仕事のオファーがあるときは、どのような形で?
富井 「こういうことできる?」といった聞かれ方をします。
―― できる業務のときはいいのですが、「自分の業務の範疇外」というときは?
富井 「できる人を紹介します」と。
―― このように金融機関が外部専門家の活用を進めているのは、2016年9月に発表された
金融庁のベンチマークの影響だとお考えですか。
富井 そういうことだと思います。金融機関は、そのつもりでいるはずです。だから士業が金融機関を訪問するなら、今ですよ。当然、早いもの勝ちというところもあります。
―― 読者のみなさん、今、大事な言葉が出ました! 「士業が金融機関を訪問するなら、今」であり、「早い者勝ち」です!
富井 だって金融機関にとっては、行政書士であろうが税理士であろうが、誰でもいいんです。自分たちの困りごとを解決してくれる人なら。だから、「できます!」と手を挙げないと。
―― でもそんな依頼を受けるほど仲よくなるまで、どうやって銀行訪問を継続できるかが問題です。
東川 継続といえば、先日ある士業さんから、銀行訪問についてこんな相談を受けたんです…。
(第3回につづきます)
富井禎文行政書士インタビュー <全5回>
「行政書士×金融機関、仲よくなるコツは?」
【もくじ】
第1回 銀行訪問は月に1日、9店舗まとめて
第2回 士業との連携を求め始めた金融機関
第3回 金融機関訪問を継続させるポイント
第4回 集客はWebじゃなく、リアルで
第5回 行政書士よ、事務所を出よう