- 2019-6-24
- 士業インタビュー
- インタビュー, 中小・零細企業のM&A, 中小企業診断士, 士業のビジネスモデル
東京都港区で、株式会社つながりバンクを経営する齋藤由紀夫さん。
株式会社つながりバンクは、小規模のM&Aに特化した、
仲介・アドバイザリー業務をメインとしながら、中小企業の課題解決に取り組む会社です。
代表取締役の齋藤さんは2012年の独立以降、70~80件の案件に関与している、
スモールM&A(中小・零細企業のM&A)のエキスパート。
跡継ぎがいないまま経営者が高齢化し、事業承継に悩む中小企業の話は枚挙にいとまがありません。
一方、ノウハウなどを蓄積した企業を買い取って、事業に弾みをつけたい経営者も多数。
両者をつなぐ齋藤さんにスモールM&Aアドバイザーのお仕事についてお話を伺うと、
まあ出るわ出るわ、多彩なエピソードのオンパレードです。
(ここには書けなかったこともたくさん…)
もともと中小企業診断士や税理士、弁護士との親和性が高く、
司法書士にとっても独自の強みを発揮できるフィールドであり、
建設業と縁の深い行政書士、案件をまとめるチカラに優れた保険営業など、
それぞれの職業が、それぞれの知識を活かして、
各方面から深く関わっていけるのが、スモールM&A。
これからの士業・コンサルタントにとって、明るい展望が開けてくるお話です。
いつものように5回連載でお届けします。聞き手はネクストフェイズ編集部ですが、
取材に同席していたネクストフェイズ代表・東川もときどき発言しています。
●齋藤由起夫さんプロフィールはこちら
齋藤由紀夫さんインタビュー(全5回)
「スモールM&Aアドバイザーってどんな仕事?」
【もくじ】
1/中小企業の支援をしたいから「スモール」M&A
2/水増し経費、売り逃げ案件…M&Aの実務トラブル、どうする?
3/診断士も税理士も司法書士も保険営業も、スモールM&Aで活躍できる
4/スモールM&Aの感情トラブルを避けるための「表現」
5/2019年セミナーはM&Aの知識のみならず、案件を発掘する方法も伝えたい
第1回 中小企業の支援をしたいから「スモール」M&A
―― 粛々と進められたのですね。
齋藤 その後、どうしても中小企業を支援したくて独立しました。当時のメインは事業再生です。でも事業再生って、必然的にスポンサーを探さないといけない。すると、これまたM&Aの業務を行うことになり、ひとつM&Aの話をまとめると、どんどん依頼が入るようになって…。
―― 具体的なきっかけは。
齋藤 小規模の、しかも業績が芳しくない企業の譲渡案件を複数手がけたとき、当時のМ&A業界の知り合い達から、なかなかサポートを受けにくかったんです。「売上数千万円の案件なんだけど」と相談すると「お手伝いするのは難しいかなあ」って。というのも、彼らが普段手がけているのは大規模のM&A。どうせ同じような手間がかかるのですから、より大きな報酬が見込める大規模な案件、手離れのいい案件、財務内容がいい案件を手がけたがるのは当然なのですが。
―― 大規模でも中小でも、M&Aの手間は同じ?
齋藤 近い部分もありますが、まったく同じわけではありません。やり方も進め方も、違う部分はあります。だから私も独立当初は試行錯誤の連続でしたよ。でも中小企業を支援するのが私の方針ですから。
―― そのうち案件も増えて。
齋藤 独立から7~8年の間に、約70~80件の案件に関与することができました。
―― すごい!
齋藤 たしかに勤め人時代にはありえない数字です。でも私、経験を積みたかったんです。だから報酬が少なくても、ときには契約書がないままに、当時は「断らない」をモットーで行っていました。ここ最近は、セミナー受講者の後方支援や、同業者サポート等も行っているので関与件数はぐっと増えましたね。
―― 報酬額より件数。
齋藤 そのとおり。最初は今ほど慣れてなかったので、非効率でした。どこに自分のフィーを乗せていいのかもわかりませんでした。「仲介」という制度も知らなかったんですよ。
―― 仲介?
齋藤 仲介は、買い手と売り手の両方から報酬をいただける立場です。私、ずっと投資する側にいたので、ずっと真面目に、片側からだけ報酬をいただいていたんです。
―― そうなんですね…。
齋藤 ただ、件数をこなさないことには効率化もできませんし、ノウハウも蓄積されません。続けるうちに「成就する案件/しない案件/誰かにお願いする案件」などが見分けられるようになりました。独立当初に取り組んでいた事業再生も、今は自分で行っていません。再生に関しては専門家の方々にご紹介して「綺麗な会社に磨き上げてもらってから戻してもらう」みたいなやり方に変わってきました。
―― だんだん効率化。
齋藤 でも自分1人のチカラは、この大きな市場にとってまったく足りない。
―― 当時の知り合いはなかなか手を出したがらない規模だし…。
齋藤 そうなんです。新しく協力者を探すうち、中小企業診断士の方々とのやりとりが増えてきました。そこで気づいたんですが、多くの診断士って…。
●齋藤さんが代表取締役を務める株式会社つながりバンクが入居するビルは、東京メトロ・神谷町の出口から30秒。
「自分の仕事内容を考えると、こんな好立地に会社を構える必要なんてなかったのに(笑)」(齋藤さん)
中小企業診断士、スモールM&Aで大活躍中
東川 中小企業診断士の僕としては、とてもうれしい言葉です。
齋藤 私が経営するつながりバンクの社員でも、中小企業診断士が大活躍しています。一年の勤務で10件のクロージングをこなすことができました。若手ですが、かなりの経験値を短期間で積んでいます。
―― 診断士さん、出番です!
齋藤 私も事業再生を他人に任せ、M&Aに専念するようになってから、経営者と深く本質的な話ができるようになりました。
東川 それこそが中小企業支援やからね。
齋藤 会社を売買するって、経営課題として最重要です。実際の売買に至るまでにも、コンサルティングすべき点がたくさん出てきますし、その先にある売買のときにはたいへんな責任を感じます。
東川 診断士とM&Aは相性がええんや。
齋藤 はい、M&Aと聞くとみなさん「儲かっている会社のM&A」と思いがちでしょうけれど、日本の中小企業に視点を移すとかならずしもそうじゃない。「あまりうまくいっていない企業」「今ちょっと弱っている企業」が対象になることも多々ある。しかもスモールM&Aの実務は、多くのコンサルタントがまだ手をつけていない分野です。
―― 独立後8年経って、齋藤さんのワークスタイルに変化は。
齋藤 独立初期と比べて、おかげさまで時間的なゆとりができました。
―― 時間的な?
齋藤 たとえば「ここを解決してからM&Aしたほうが有利に売れます、3年くらいかかるので、3年後に戻ってきてください」と。そんな「成長待ち」案件をたくさん持てるようになりました。
―― 案件をまとめるのに焦らなくなった?
齋藤 そうです。たとえば社長カラーが強すぎる会社って売れにくいんですよ。「これからの1~2年でナンバー2の方に権限移譲して、業務を仕組み化してください。仕組み化が難しいようなら、僕の知り合いのコンサルタントを紹介します、料金はリーズナブルに頼んでおきますよ」と提案することもあります。
―― きちんとビジネスモデルになってる…。
齋藤 もちろん提携コンサルタントに任せきりじゃなく、僕も定期的にチェックしている会社もたくさんありますよ。
―― ちゃんとその会社、M&A市場に戻ってきてくれます?
齋藤 よくみなさん戻ってきてくださいますよ。長年やっていると、そういうことも見えてきます。
―― なんだかいい話ばっかりですが、齋藤さん、失敗とかないんでしょうか。
齋藤 いっぱりありますよ! たとえば…。
(第2回に続きます)
齋藤由紀夫さんインタビュー(全5回)
「スモールM&Aアドバイザーってどんな仕事?」
【もくじ】
1/中小企業の支援をしたいから「スモール」M&A
2/水増し経費、売り逃げ案件…M&Aの実務トラブル、どうする?
3/診断士も税理士も司法書士も保険営業も、スモールM&Aで活躍できる
4/スモールM&Aの感情トラブルを避けるための「表現」
5/2019年セミナーはM&Aの知識のみならず、案件を発掘する方法も伝えたい
齋藤由紀夫スモールM&Aアドバイザーによる【スモールM&A】ノウハウ入門講座2019
今回の取材で話していただいたスモールM&Aについて、実務テクニックはもちろん、今までの歴史から現在のマーケット傾向まで、最新の実例を交えてお話しします。
2018年に行った同セミナーも好評でしたが、今回はとくに初心者がつまずきがちなソーシング(売り手発掘)についても時間を割いてくださるとのこと。
もちろん質問のための時間も設けていますので、気になること、深く知りたいことなど、何でも気軽にご相談ください。
●日時・会場
2019年8月2日(金) 18:00〜20:30 DAYS赤坂見附
2019年8月10日(土) 15:00〜17:30 DAYS赤坂見附
2019年8月17日(土) 14:00〜16:30 サニーストンホテル<江坂>北館
2019年8月21日(水) 18:00〜20:30 サニーストンホテル<江坂>北館
●定員 各回 25名
●受講料 6,500円(税別)
●セミナー詳細、前回の受講者の声、お申し込みなどは下記からどうぞ↓
きんざい
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