- 2019-6-25
- 士業インタビュー
- インタビュー, 中小・零細企業のM&A, 士業のビジネスモデル
東京都港区で、株式会社つながりバンクを経営する齋藤由紀夫さん。
株式会社つながりバンクは、小規模のM&Aに特化した、
仲介・アドバイザリー業務をメインとしながら、中小企業の課題解決に取り組む会社です。
代表取締役の齋藤さんは2012年の独立以降、70~80件の案件に関与している、
スモールM&A(中小・零細企業のM&A)のエキスパート。
跡継ぎがいないまま経営者が高齢化し、事業承継に悩む中小企業の話は枚挙にいとまがありません。
一方、ノウハウなどを蓄積した企業を買い取って、事業に弾みをつけたい経営者も多数。
両者をつなぐ齋藤さんにスモールM&Aアドバイザーのお仕事についてお話を伺うと、
まあ出るわ出るわ、多彩なエピソードのオンパレードです。
(ここには書けなかったこともたくさん…)
もともと中小企業診断士や税理士、弁護士との親和性が高く、
司法書士にとっても独自の強みを発揮できるフィールドであり、
建設業と縁の深い行政書士、案件をまとめるチカラに優れた保険営業など、
それぞれの職業が、それぞれの知識を活かして、
各方面から深く関わっていけるのが、スモールM&A。
これからの士業・コンサルタントにとって、明るい展望が開けてくるお話です。
いつものように5回連載でお届けします。聞き手はネクストフェイズ編集部ですが、
取材に同席していたネクストフェイズ代表・東川もときどき発言しています。
●齋藤由起夫さんプロフィールはこちら
齋藤由紀夫さんインタビュー(全5回)
「スモールM&Aアドバイザーってどんな仕事?」
【もくじ】
1/中小企業の支援をしたいから「スモール」M&A
2/水増し経費、売り逃げ案件…M&Aの実務トラブル、どうする?
3/診断士も税理士も司法書士も保険営業も、スモールM&Aで活躍できる
4/スモールM&Aの感情トラブルを避けるための「表現」
5/2019年セミナーはM&Aの知識のみならず、案件を発掘する方法も伝えたい
第2回 水増し経費、売り逃げ案件…M&Aの実務トラブル、どうする?
―― それ、掲載しても…?
齋藤 いいですよ。次々と案件が決まり、油断していた時期でした。別事業に計上されていた広告費、本部で負担していた経費などを、私は見抜けませんでした。…というか、そう簡単には見抜けませんよ、そんなの。
―― えええー。では、防ぐ方法は…。
齋藤 嘘をつく人とはそもそも付き合わないのがいちばんの回避法ですが…。このときの私の反省としては、まず経営者との信用関係を築くところから始めないといけませんでした。「依頼します」「はい、わかりました」ではなく。
―― 独立当初は、経験を積むことに熱心でおられたから…。
齋藤 そうですね。このときデューデリ(デューデリジェンス=ざっくり言えば会社の評価)まで深く踏み込んだのですが、過少申告経費は総勘定元帳等をじっくり見て調べるなどで避けられたことです。アドバイザーとして見なくちゃいけないところを、私、油断してしまいました。収めるのに2年かかりました。でもね。
―― でも?
●「失敗なんてたくさんあります。とくに初期は経験を重ねることを重視していたので、それはもう…。
でも失敗から何を得るかが大切だと思うんです」(齋藤さん)
東川 逃げない覚悟は大事でしょ。
齋藤 逃げない方がアドバイザーのレベルも上がるんです。このケースでは、経営を改善するためのプランを一緒に考え、次の譲渡先を探すことで落ち着きました。
―― よかった…。
齋藤 おかげでチカラがついたのと同時に、信用も高まりました。というのも、このお客さんから、次の案件をお願いされたんですよ。
―― おお!
齋藤 責任を持って仕事をまっとうしてくれたからと言ってくださって。
東川 トラブルのときって一番信用を作りやすいんですよね。それを解決するかどうかで。
齋藤 そうですね。だからチャンスだと思って、逃げない方がいいですね。あとは、М&Aではないけれど、経歴も事業も信用調査も問題ない先を気軽に金融機関に紹介したところ、ほぼ詐欺のような会社で…。結果として自分の信用を失うとこになったこともあります。
―― (そんなことまで…)
齋藤 また、独立間もない頃のМ&A案件で、譲渡後に簿外債務が発覚したこともありました。売手と、そのアドバイザーが結託した売り逃げ案件でした。結果として司法の場で争うことになってしまった…。
―― ついに司法へ。
齋藤 最初の頃の話ですよ。でもこの案件を手がけたおかげで、株式譲渡ではなく、事業譲渡や会社分割という手法を習得し、選択肢の幅が広がりました。何ごとも経験です。
頭と身体のバランスを取るためのランニングと落語
齋藤 頭が疲れ過ぎて、身体とのバランスが取れていないと気づいたんです。そこで始めたのがランニング。今ではウルトラマラソンにも出場します。
―― すごい、ウルトラって100kmですよ…。
齋藤 練習でゆっくり走るときは、ひとり経営会議しています。私にとってランニングは仕事ですね。
●齋藤さんの仕事アイテム近影。「シューズはアシックスのターサージール5。実に軽いんです。
なんと片足150g、文庫本1冊と同じ重さで、出張で持ち出すときも負担になりません。
時計はガーミンのフェニックスSapphire。機能が多すぎて使いこなせていませんが、
ウルトラマラソン距離でもしっかりGPS計測できる優れもの。どちらも欠かせない仕事道具です」(齋藤さん)
齋藤 走りながら落語を聞いています。立川志の輔さんがいいですね。志の輔さん以外にも談志師匠など多くの方が演じてますが、とくに『芝浜』!
東川 人情噺ですね。
齋藤 落語は仕事にも活かしています。先日ある投資家に『芝浜』を聞くように薦めたんです。その方、急に億単位の売却益が入ったので、無益なものに使わないように、一見おいしい話が来ても軽々しくなびかないようにと伝えたくて。
東川 それなら『芝浜』は最適です。
齋藤 最終的にその方は、自分に投資することに決めました。最高学府の大学院への入学を目指し日々勉強中です。
東川 僕も落語好きやから、落語がその方のためになった、齋藤さんのビジネスの役に立ったと聞いてうれしい。
●ふたりともたいへん真面目な顔をしていますが、共通の趣味であるランニングと落語の話をしています
「ランニングアプリはストラバが最高です。SNS度が高くて」(齋藤さん)
「僕は別のん使ってるんですが、もう新しいアプリ覚えられへん…。落語なら僕は桂枝雀が好きで…」(東川)
齋藤 総務省統計局のデータはよく見ています。ここでわかるのは、統計で見る人口動態、経済指数などですね。○○県の人口、会社数、産業数…。妄想が膨らんでワクワクします。
―― 一般的なニュースサイトではなく、一次情報なんですね。
齋藤 はい、統計局の一次情報は恣意性が感じられず、信頼性が高く、仕事にとても有用です。もちろん無料ですし、エクセルで取得できるので 掛け算などの加工もしやすい。コンサルタントは絶対使うべきですよ。
東川 事業計画書を作るときは必須です。
齋藤 そうそう、商圏調査とかね。
―― 喜びも大きいけれど、同じくらい疲労するスモールM&Aアドバイザーのお仕事。士業なら誰もが活躍できる、とはなかなか思えないのですが…。
齋藤 先ほどは中小企業診断士の例を出しましたが、資格それぞれの特質を活かすことで、誰でもスモールM&Aで活躍できるんですよ。
―― 本当に?
(第3回に続きます)
齋藤由紀夫さんインタビュー(全5回)
「スモールM&Aアドバイザーってどんな仕事?」
【もくじ】
1/中小企業の支援をしたいから「スモール」M&A
2/水増し経費、売り逃げ案件…M&Aの実務トラブル、どうする?
3/診断士も税理士も司法書士も保険営業も、スモールM&Aで活躍できる
4/スモールM&Aの感情トラブルを避けるための「表現」
5/2019年セミナーはM&Aの知識のみならず、案件を発掘する方法も伝えたい
齋藤由紀夫スモールM&Aアドバイザーによる【スモールM&A】ノウハウ入門講座2019
今回の取材で話していただいたスモールM&Aについて、実務テクニックはもちろん、今までの歴史から現在のマーケット傾向まで、最新の実例を交えてお話しします。
2018年に行った同セミナーも好評でしたが、今回はとくに初心者がつまずきがちなソーシング(売り手発掘)についても時間を割いてくださるとのこと。
もちろん質問のための時間も設けていますので、気になること、深く知りたいことなど、何でも気軽にご相談ください。
●日時・会場
2019年8月2日(金) 18:00〜20:30 DAYS赤坂見附
2019年8月10日(土) 15:00〜17:30 DAYS赤坂見附
2019年8月17日(土) 14:00〜16:30 サニーストンホテル<江坂>北館
2019年8月21日(水) 18:00〜20:30 サニーストンホテル<江坂>北館
●定員 各回 25名
●受講料 6,500円(税別)
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●残念ながら『芝浜』は収録されていないようでした…↓
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