- 2019-6-26
- 士業インタビュー
- インタビュー, 中小・零細企業のM&A, 事業承継, 保険営業, 司法書士, 士業のビジネスモデル, 弁護士, 税理士
東京都港区で、株式会社つながりバンクを経営する齋藤由紀夫さん。
株式会社つながりバンクは、小規模のM&Aに特化した、
仲介・アドバイザリー業務をメインとしながら、中小企業の課題解決に取り組む会社です。
代表取締役の齋藤さんは2012年の独立以降、70~80件の案件に関与している、
スモールM&A(中小・零細企業のM&A)のエキスパート。
跡継ぎがいないまま経営者が高齢化し、事業承継に悩む中小企業の話は枚挙にいとまがありません。
一方、ノウハウなどを蓄積した企業を買い取って、事業に弾みをつけたい経営者も多数。
両者をつなぐ齋藤さんにスモールM&Aアドバイザーのお仕事についてお話を伺うと、
まあ出るわ出るわ、多彩なエピソードのオンパレードです。
(ここには書けなかったこともたくさん…)
もともと中小企業診断士や税理士、弁護士との親和性が高く、
司法書士にとっても独自の強みを発揮できるフィールドであり、
建設業と縁の深い行政書士、案件をまとめるチカラに優れた保険営業など、
それぞれの職業が、それぞれの知識を活かして、
各方面から深く関わっていけるのが、スモールM&A。
これからの士業・コンサルタントにとって、明るい展望が開けてくるお話です。
いつものように5回連載でお届けします。聞き手はネクストフェイズ編集部ですが、
取材に同席していたネクストフェイズ代表・東川もときどき発言しています。
●齋藤由起夫さんプロフィールはこちら
齋藤由紀夫さんインタビュー(全5回)
「スモールM&Aアドバイザーってどんな仕事?」
【もくじ】
1/中小企業の支援をしたいから「スモール」M&A
2/水増し経費、売り逃げ案件…M&Aの実務トラブル、どうする?
3/診断士も税理士も司法書士も保険営業も、スモールM&Aで活躍できる
4/スモールM&Aの感情トラブルを避けるための「表現」
5/2019年セミナーはM&Aの知識のみならず、案件を発掘する方法も伝えたい
第3回 診断士も税理士も司法書士も保険営業も、スモールM&Aで活躍できる
齋藤 そのとおりです。詳しくお話しする前に、アドバイザーに必要な資質からお伝えしましょう。
―― スモールM&Aアドバイザーに必要な資質。
齋藤 まず「誠実さ」です。大事な会社の行く末を任せるため、経営者はM&Aアドバイザーの人間性をすぐに見抜きます。不誠実な仕事は継続しませんからね。とくに、功を焦って話を無理矢理まとめないことは大切です。「うまくいかない気がする」と思ったら中断する、あるいは白紙に戻す誠実さが必要です。
―― 誠実さ。
齋藤 また先ほど私の失敗例のときもお話ししましたが、何かトラブルがあったときに「逃げない胆力」。
―― 責任感ですね。
齋藤 はい。一方、知識面でいうと、最低限の財務知識は必要です。
―― そこは問題ない士業さんも多そうです。
齋藤 実はデューデリまで踏み込むかどうかでも変わってくるんですよ。デューデリに踏み込まなければ「M&Aアドバイザーは、雑談できればいい」と僕は思う。だって紹介するだけで、後は専門家に繋げばいいじゃないですか。でも、専門家に繋ぐときに価格の話が出るでしょう? そこで「純資産って何」っていうことがわからないと難しいですよね。「修正純資産のとき不良債権や在庫があるので削るべきですねー」とか。
東川 それはさすがに知ってないとできないですね。
齋藤 まあ足し算引き算の話でそう難しいわけじゃないので、少し頑張ればできると思いますが。
●「このビジネスは何で儲かっているのか、どういう点がさらに伸ばせるかなどのビジネス評価も、
M&Aアドバイザーの資質として重要なポイントです」(齋藤さん)
齋藤 初心者のスモールM&Aアドバイザーがつまずきやすいのは、売り手をどう発掘するか、ですよね。みなさんどのようなイメージをお持ちかわかりませんが、実はM&A業界では以前から「売り手市場」です。買いたい人が多くて、売る人が求められているんです。
―― 逆だと思っていました…。
齋藤 そう、逆なんです。売る企業を見つけるのが難しい。でもスモールM&Aアドバイザーって案件がないと売上につながらないでしょ、案件を見つけることが肝心です。
―― どうすれば案件を獲得できますか。
齋藤 売りたい企業を、みなさん「自分で見つけよう」と思っていますよね。でも「その業界に詳しいコンサルタントで、かつ中小企業の社長と接点を持っている人」を多く知っていると、「事業承継」が絶対出てくるんですよ。
―― 人脈ですか。
齋藤 でも人脈は、この仕事をしばらく続ければ築けていけますので、あまり心配しなくてもよいでしょう。あとは、最近、弊社も初めて成約しましたが、マッチングサイトです。たまにいい案件が出ているんですよ。でも「買いたい」と思う社長は、自分でそんなサイトを深掘りしないんです。
―― 人脈、マッチングサイト…。つまり、自分だけで完結させなくてもいい。
齋藤 はい、スモールM&Aの案件獲得は、間接ルートで解決できることも多いんです。
●「実は保険営業さんもスモールM&Aアドバイザーに向いています。
案件をまとめるチカラに優れている方が多い。ぜひおすすめしたいです」(齋藤さん)
どの士業でも、特質を活かした関わり方ができる
齋藤 そうですね。でも、どの士業でも特質次第で活躍の場はあります。実際に中小企業診断士はもちろん、税理士、行政書士、あと公認会計士、弁護士もセミナーにはよくお越しです。
―― 2018年のスモールM&Aセミナーでも、弁護士さんに多くご参加いただきました。
齋藤 僕、実際に弁護士さんと連携することがとても多いんです。あと、司法書士は今まで少なかったんですが、ここにきて変わってきました。やはりAIの発達などによる危機感からでしょうか。
東川 そういえば2019年にネクストフェイズが行う相続案件獲得セミナー、これも司法書士の参加が多くて。
齋藤 会社登記を自分で行う人は増えているし、一方、不動産登記はこれから減ってきそうですしね。でもご安心ください、スモールM&Aで司法書士さんが活躍できる、もっとも強い分野があります。
―― 何でしょう。
齋藤 会社分割です。
―― 会社分割。
齋藤 分割は、赤字会社のM&Aには必須項目なんです。でも、中小企業案件で、これができる方が少なくて。司法書士のなかには、すでにM&Aについての勉強会を立ち上げる方もいらっしゃいますよ。
東川 勉強するなら今。
齋藤 あと、これは最近の僕の手法なんですが、M&Aの前段階として合弁会社を作るんです。いきなり事業譲渡すると、従業員のテンションが落ちちゃうんですよね。そこでまず買い手側6割:元の会社4割の合弁会社を作り、ソフトランディングさせるスタイルです。
―― あ、そこで!
齋藤 そう、このときは司法書士さんにお願いしています。手続きとかナーバスな話もありますし、会社法を分かっている司法書士さんのチカラを借りるんです。
―― 司法書士さん、出番ですよ!
齋藤 また司法書士さんは、日頃から不動産などの業務を通して、金融機関との連携が強い人が多いですね。金融機関との連携ができていると、M&A案件の発掘がしやすいんです。これは資格関係なく、金融機関との関係が強い人ならではの強みではありますが。
東川 どの士業でも、それぞれに活躍できる場があるということ。
―― それは心強い。でもスモールM&Aって、知識だけでフォローしきれないことがありそう。
齋藤 感情が絡みますからね。その回避法についても話しましょうか。
(第4回に続きます)
齋藤由紀夫さんインタビュー(全5回)
「スモールM&Aアドバイザーってどんな仕事?」
【もくじ】
1/中小企業の支援をしたいから「スモール」M&A
2/水増し経費、売り逃げ案件…M&Aの実務トラブル、どうする?
3/診断士も税理士も司法書士も保険営業も、スモールM&Aで活躍できる
4/スモールM&Aの感情トラブルを避けるための「表現」
5/2019年セミナーはM&Aの知識のみならず、案件を発掘する方法も伝えたい
齋藤由紀夫スモールM&Aアドバイザーによる【スモールM&A】ノウハウ入門講座2019
今回の取材で話していただいたスモールM&Aについて、実務テクニックはもちろん、今までの歴史から現在のマーケット傾向まで、最新の実例を交えてお話しします。
2018年に行った同セミナーも好評でしたが、今回はとくに初心者がつまずきがちなソーシング(売り手発掘)についても時間を割いてくださるとのこと。
もちろん質問のための時間も設けていますので、気になること、深く知りたいことなど、何でも気軽にご相談ください。
●日時・会場
2019年8月2日(金) 18:00〜20:30 DAYS赤坂見附
2019年8月10日(土) 15:00〜17:30 DAYS赤坂見附
2019年8月17日(土) 14:00〜16:30 サニーストンホテル<江坂>北館
2019年8月21日(水) 18:00〜20:30 サニーストンホテル<江坂>北館
●定員 各回 25名
●受講料 6,500円(税別)
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中央経済社
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