- 2015-5-18
- 士業インタビュー
- インタビュー, ネクストフェイズ編集部, 社長対談, 税理士
東京都墨田区で開業している税理士・猪田昭一(いのだ・しょういち)さんは、
独立3年目を迎えた29歳。
そう、まだ20代! しかも、もう独立3年目なんです。
営業は一切しないのに絶賛繁盛中というその理由を中心に、
ネクストフェイズ社長…というか、
今回はむしろ中小企業診断士としてのヒガシカワとご対談いただきました。
ユニークな仕事スタイル、金融機関との関係を作っていく方法、
関与先から融資相談を受けたら税理士的にどうなのとか、
専門家が知っておきたい各種の公的補助金、地域密着主義の貫きかた、
地元の士業ネットワークづくり、次世代を見据えた事業計画…などなど、
会話はまるでジェットコースターのようにスピーディでエキサイティング。
ふたりのお喋りをそばで聞いているような気になれる(ことを目指した)ライブな対談、
今回はたっぷり10回連載でお届けしましょう。
猪田さんが展開する内容の広さと濃さのおかげで、破格の読みごたえですよ。
【もくじ】
第1回 ほとんどの顧客が法人。個人さんは受けません。なぜなら…。
第2回 金融機関にとって「役に立つ」税理士。
第3回 地域の若手士業と、どんどん連携していきます。
第4回 顧客からの融資相談、コツさえつかめば難しくないのに…。
第5回 公的補助金申請のお手伝い、する? しない?
第6回 地場で連携して、この土地から新しいものを。
第7回 自治体訪問時に、みかん置いてきたりして。
第8回 税理士も、クリエイティブに。
第9回 次世代の経営者を育てると、自分も育っていく。
第10回 「すきま」は、つついていると広がる。
*****************************************************************************
第8回 税理士も、クリエイティブに。
猪田 最近、事業戦略としてすごい考えているのは、中小企業とか零細はもう、すきまの一点突破しかないよってことなんです。何で僕が創業一点に絞って、前後10歳くらいのお客さん以外ほとんど断るかっていうと、それは「すきま」というか、エッジ利かせる以外にないんですよ。
東川 その勇気を、皆さん持てないんですよね。
猪田 でも「戦略とは、捨てること」かなって僕、思います。それは、何よりも、勝つために。「何でもやります」じゃ、いいことはない。「集中と選択」みたいな話よくありますけど、そういうことですね。とくに中小企業って、「いろんなもの」じゃなく「キーになるもの」をおさえないと…。とはいえ、僕がこの3年ぐらいで創業に集中したのは偶然で、それが当たったのもまた偶然なんですが。
東川 いや、ほかの分野を始めていたら、そっちに集中していたでしょう。
猪田 …と、思います。事業承継はたぶん自分には合わねえなと思ってやらなかったの、意外でしょ。
東川 事業承継は、ある程度の年齢が要りますからね。
猪田 社長が安心しませんからね。先代の。じいちゃんが、会長が、安心しないので。
東川 猪田さんって、今の年齢やからこそできることを、ものすごくいろいろやってはるなあ。
猪田 事業戦略の話に戻ると、次の3~5年をかけて、「若手の」承継みたいなもの向けてやっていくのと、あとは、ものづくりですね。僕、「税理士もクリエイティブじゃないといけない」という話をよくするんです。待っているだけじゃしゃあないし、新しいものを作り出していくってことは、「新しいアイデア×資金」であり、資金面なら僕ら手伝えることがあるでしょ。だから僕ら税理士もクリエイティブな発想で仕事しなさい、そのほうが面白いよねって言ってます。今後は「ものづくり×クリエイティブ」で、事業創出に注力します。
東川 僕も思っていたんですけど、税理士さん自身がもう、コンサルタントにならんとアカンのんとちゃうかな。「普通に税務・財務やります」じゃ、価格競争になるでしょう。付加価値を提案できるからこそ、それなりのフィーももらえるでしょうし、紹介も生まれてくると思うので。
猪田 今後税理士に聞かれたら言わないといけないんだろうなと思うのは、「税理士の日常は、過去を追っているんですよ」って。
東川 そうです。
猪田 数字決算して、記帳代行してって、それ、過去を追っているんですよって。でも、融資とか補助金って、未来。まあ、マーケティングもそうですね。で、過去と未来の両方が大事なんです。過去をちゃんと見られるからこそ、未来を見るために何をするかというのを、僕ら税理士が考えるべきなんじゃないかな。
東川 猪田さん、金融機関とつながっておられるならよく耳にされると思うんですけども、たとえば経営改善計画書、中小企業の社長は自分じゃなくて税理士さんに依頼して作ってもらうことがけっこう多いんです。しかしその書類、金融機関からの評判がすこぶる悪いんですよ、税理士。
猪田 ははは。僕、この前、金融機関が経営者向けに発行している媒体にコラム書いたんですけど、書き過ぎて超怒られたんですよ。「税理士に、“先生頼む。うまいことやっといて”って書類頼んでも、その書類、金融機関の審査で絶対落とされますよ」って書いちゃったんです。そしたらその部分だけすごい怒られました(笑)。
東川 そのまま載っちゃったんですか。
猪田 載せないです。コンプラで引っかかって、「この原稿使いたいし、めっちゃみんな笑っているけど、使えない」って(笑)。
東川 何で金融機関が税理士の作った資料を嫌がるか、使えないと判断するのかといえば、その書類に未来のことが書かれてないからなんですよね。数字のつじつま合わせはできてんねんけども、その数字を作るためのアクションプランができていない、「絵に描いた餅」なんです。税理士さんの9割がそんな経営改善計画書しか作れない。金融機関側としては、未来を見せてもらわんとお金貸せないので、あやふやな未来出されてもしゃあないのでね。
猪田 だから僕、中小企業の最近一番元気なところとは、繋がりたいって思っています。深海探査艇・江戸っ子1号を作る浜野製作所さん、下町ボブスレーネットワークプロジェクトや全日本製造業コマ大戦の企業さんたちですね。まいど1号はさすがに大阪なので難しいですけど。
東川 残念です(笑)。
●技術自慢の中小企業が集まる東大阪発人工衛星「まいど1号」、プロジェクトは現在オトナの事情で…。「どこにでも複雑な事情はありますって」(猪田さん)
猪田 江戸っ子1号は墨田区、ボブスレーは大田区、コマ対戦の総本山は横浜ですが、近くでイベントしているときには遊びにいったり、あと、バーベキュー来ていただいたり(笑)、いろんなところでキーマンとは仲よくさせていただいています。
東川 やっぱりバーベキューなんや(笑)。
猪田 コマ大戦なんかだと、町工場の職人がああやって輝くのが面白いですね。そこから次に新しく輝くものがまた出てきて、次世代がどこまでがんばるかが大事かな。今の社長たちは50歳前後なので、今年30歳になる僕が35~40歳になる間に、新しいことが何か1つできればいいかなって思っています。
東川 次世代…。それについて私もお話ししたいことがありまして…。
(次回に続きます)
*****************************************************************************
【もくじ】
第1回 ほとんどの顧客が法人。個人さんは受けません。なぜなら…。
第2回 金融機関にとって「役に立つ」税理士。
第3回 地域の若手士業と、どんどん連携していきます。
第4回 顧客からの融資相談、コツさえつかめば難しくないのに…。
第5回 公的補助金申請のお手伝い、する? しない?
第6回 地場で連携して、この土地から新しいものを。
第7回 自治体訪問時に、みかん置いてきたりして。
第8回 税理士も、クリエイティブに。
第9回 次世代の経営者を育てると、自分も育っていく。
第10回 「すきま」は、つついていると広がる。