- 2015-5-22
- 士業インタビュー
- インタビュー, ネクストフェイズ編集部, 社長対談, 税理士
東京都墨田区で開業している税理士・猪田昭一(いのだ・しょういち)さんは、
独立3年目を迎えた29歳。
そう、まだ20代! しかも、もう独立3年目なんです。
営業は一切しないのに絶賛繁盛中というその理由を中心に、
ネクストフェイズ社長…というか、
今回はむしろ中小企業診断士としてのヒガシカワとご対談いただきました。
ユニークな仕事スタイル、金融機関との関係を作っていく方法、
関与先から融資相談を受けたら税理士的にどうなのとか、
専門家が知っておきたい各種の公的補助金、地域密着主義の貫きかた、
地元の士業ネットワークづくり、次世代を見据えた事業計画…などなど、
会話はまるでジェットコースターのようにスピーディでエキサイティング。
ふたりのお喋りをそばで聞いているような気になれる(ことを目指した)ライブな対談、
今回はたっぷり10回連載でお届けしましょう。
猪田さんが展開する内容の広さと濃さのおかげで、破格の読みごたえですよ。
【もくじ】
第1回 ほとんどの顧客が法人。個人さんは受けません。なぜなら…。
第2回 金融機関にとって「役に立つ」税理士。
第3回 地域の若手士業と、どんどん連携していきます。
第4回 顧客からの融資相談、コツさえつかめば難しくないのに…。
第5回 公的補助金申請のお手伝い、する? しない?
第6回 地場で連携して、この土地から新しいものを。
第7回 自治体訪問時に、みかん置いてきたりして。
第8回 税理士も、クリエイティブに。
第9回 次世代の経営者を育てると、自分も育っていく。
第10回 「すきま」は、つついていると広がる。
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第10回 「すきま」は、つついていると広がる。
東川 最後に、独立開業したばかりの若手税理士さんに、先に開業している先輩いう立場から猪田さんがアドバイスするなら…?
猪田 アドバイスですか。うーん…。絶対、何かしらの商売で売上は立つはずなんですけども、自分が先にもうけようとしたりキャッシュを取ろうとすると、お客さんは逃げていきますよね。僕の最初のお客さんになってくれた人に、ひとつ約束をしてもらったんです。「自分を応援してくれる人を3人作りなさい」って。この3人というのは、何にも自分が言わなくても、自分のことを宣伝してくれる人です。今の言葉でいえば、「アンバサダー」(笑)。
東川 なるほど、アンバサダー(笑)。
猪田 「そうしたら、あなたの評判は勝手に広がっていくでしょう」って言いました。縁の下の力持ちでいいんです。小さなことでも、ずっと続けなさいって。たとえばイベントのときなんかでも、「自分が自分が!」って目立つんじゃなくて、自分は目立たなくてもいい、絶対それを見てくれている人はいるよと。
東川 今の損得だけでものごとを考えたらアカンて。
猪田 あと、最近聞いたのは、「頭のいいやつは目の見えることを材料に考えるけど、バカは見えないものまで考える」って。頭のいいやつは目の前に出てきた、たとえば数字とか、見えるものだけで判断するけど、その先にあるものを想像しないんだと。
東川 「頭のよすぎるバカ」ですね。そういうタイプは、考えに考えたうえで、「絶対に行ったらアカン方向」を選ぶんですよね。
猪田 あとは、自分にしかできないことを探すしかないかなと思っています。
東川 さっきお話しになった、「すきまの一点突破」ですね。
猪田 はい、僕は「すみだ地域創業スクール」に関わっているんですが、ここがすごくとんがってるんです。女性しかだめ、女性以外受け入れない「すみだ女性のための起業家スクール」とか、ものづくりと新規創業でブランディングしかやらない「すみだ第二創業スクール」とか。さらに今年の申請が通れば、クリエイター専門の創業スクール、独立するクリエイター・デザイナー専門、あとデザイナーとさっきのものづくり企業をつなぐ組み合わせ新規創業スクールとかも考えています。こんな「振り切ったところを突っつく」のは、行政とか金融機関は絶対できない。
東川 そうでしょうね。
猪田 どこにでもこういう「すきま」は存在しているはずだし、すきまって、つついているといつの間にか大きくなるんです。でも大きくなる前にやめちゃったり、いま目の前にいる金になりそうな人間から大金せしめようとするとか、そういう小ちゃいことをしていると、ろくでもないというか、面白くもないでしょ。それより3年とか5年先の売上を考えるのは面白いですよ。
東川 先ほど「焦らない」とおっしゃっていたのと、まったく一緒ですね。「今」ではなく、3年、5年先の売り上げを見ていこうという。
猪田 だって税理士なんて、士業なんて、固定費かからないんだもん。
東川 利益率は高いはずなんですけどね。
猪田 さっきのアンバサダーじゃないけど、大阪のおせっかいおばちゃんみたいに、自分のことを勝手に宣伝してくれる、しかも商売うまくいっている人、絶対いますよ。誰の身の周りにも、3人ほど。
東川 いてます。そういう人、絶対いる。
猪田 専門家業界を得意とする、おせっかいおばちゃん。まあ、僕もそうですけど(笑)。
●「おせっかいおばちゃんがふたり、仲よくひとつの写真におさまる」の図
東川 僕のね、長期的な夢なんですけども、創業者に積極的にお金を出せる民間金融機関を作りたいんですよ。すでに政策金融公庫ではそれが可能ですが、民間金融機関でこれができたら、おもろい金融機関になるやろな思て。
猪田 だったらファンドマネージャーの創業に特化したファンドで、あんまり難しすぎない契約のもの(笑)なんかは、いいかもしれないですね。
東川 それ、すでにやっておられる企業さんがあります。ただ、なかなか十分には稼働しきれていないようですけれどね。
猪田 目利きが難しいですよね。それと、集客。
東川 集客は難しいですね。でも、そんな金融機関ができたら、もっと日本経済は活性化するやろと思てます。なんとかして、民間の金融機関のほうから開業率を上げていけたらなあ。従来型の金融機関からは、なかなかそういう働きかけがでけへんのは、僕もわかってるんで。
猪田 それこそ、僕ら専門家がやるべきなのかもしれないですね。専門家業界がね。
東川 今、僕が融資に強い専門家を育てているというのは、そのための布石なんですよ。融資に強い専門家が前さばきして、金融機関とつながったら、すごく面白くなってくるでしょ。
猪田 お客さんをクリエイトするという意味で、僕らも創業者サポートをやらないと。すでに人のやっている分野へ、値下げしてまで参入してもしゃあないし。先日ある方に言われましたけど、「値下げだったらバカでもできるんだよ」って。
東川 そのとおり! 値下げなんて、一番ものごとを考えてへん戦略ですよ。知恵使うか、頭使うか、汗かくか、気をつかうかして取ったお客さんは離れないけれど、値段で勝負して取ったお客さんはもっと安いの出たらすぐ去ってしまう。
猪田 だから僕、ネットで集客しないんです。紹介を作るための布石とか、メディアでの自分の見え方とかは考えて行動しますけど。たとえばさっき言ったみたいに、美味しいものの写真しかFacebookに上げないとかね。でも僕、それはお客さんに対しても言ってますからね、堂々と。僕とつながったら美味しいもの食べに行けると思われるかもしれないけれど、あれはメディア戦略だからって(笑)。
東川 いやいや、そこは(笑)。だって猪田さんと一緒やったら、ホントに美味しいもの食べに行けるでしょ?
猪田 行けます!(笑)←きっぱり
(終わります)
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【もくじ】
第1回 ほとんどの顧客が法人。個人さんは受けません。なぜなら…。
第2回 金融機関にとって「役に立つ」税理士。
第3回 地域の若手士業と、どんどん連携していきます。
第4回 顧客からの融資相談、コツさえつかめば難しくないのに…。
第5回 公的補助金申請のお手伝い、する? しない?
第6回 地場で連携して、この土地から新しいものを。
第7回 自治体訪問時に、みかん置いてきたりして。
第8回 税理士も、クリエイティブに。
第9回 次世代の経営者を育てると、自分も育っていく。
第10回 「すきま」は、つついていると広がる。