- 2023-7-10
- スモールM&A・事業再生
- リスケ, 事業再生, 融資を断られた, 金融機関とのつきあい方, 金融機関の内側
金融機関の考え方から逆算し、ポイントをおさえてリスケ交渉を進めましょう。
こんにちは。株式会社ネクストフェイズのヒガシカワです。
2023年7月、コロナ融資の返済開始が初回ピークを迎えます。その影響か近ごろ、ネクストフェイズが運営する一般社団法人融資コンサルタント協会の会員士業・コンサルタントからも、「コロナ融資の返済が本格化して今のままでは返済できない顧客がいる」という相談が増えてきました。
こんなとき私は「同額借換」をおすすめしていますが、なかには金融機関が同額借換に応じない事例が聞かれるようになりました。
同額借換を断られると、リスケしか方法がありません。しかし交渉を正しく行わないと金融機関は認めてくれませんし、リスケ脱却への道が遠回りになることがあります。今日は、有利に進めるリスケ交渉のセオリーをお伝えしましょう。
同額借換については過去記事でも解説していますので、ぜひご参照ください。
※なおネクストフェイズは、事業者への個別アドバイスを行っていません。ご相談のある事業者は、ネクストフェイズが運営する一般社団法人融資コンサルタント協会の会員を検索して気軽に連絡を取ってください。融資の専門研修を受けた融資コンサルタントが、全国に900名以上います
セオリー① 初リスケは元金返済ゼロが基本
初めてのリスケ交渉は、元金返済ゼロが基本です。
たとえ返済に充てられるキャッシュがいくらかあっても、手元に置いておきましょう。なぜなら、「リスケすると金融機関は新規融資をしてくれないから」です。
リスケを行うとき企業は「経営改善計画書」を作成し、自社の経営改善に着手します。とはいえ効果がすぐ現れることはほとんどなく、ある程度の時間を要します。
また金融機関への返済が減額になれば資金繰りは多少改善されますが、劇的に向上するわけではありません。また経営改善の過程で、投資のための資金が必要な場面も出てきます。
しかしリスケを行ってしまうと、ほとんどの場合金融機関は新規融資を行わないため、経営改善のための必要な投資ができなくなります。
元金返済をゼロにして浮いたキャッシュを貯めておけば、将来必要となる投資資金を確保しやすくなるでしょう。少しでも多くの資金をプールするため、初めてのリスケは「返済額ゼロ」で交渉しなくてはならないのです。
セオリー② 全行協調
複数の金融機関から借りている場合、すべての金融機関と交渉をする必要があります。交渉順は、「融資額が一番多い金融機関」からです。
が、どの金融機関に対しても同じ情報を伝え、同じ要望を出さなければなりません。一つでも非協力的な金融機関があれば、リスケはまとまらなくなります。
そこで確実なリスケ実行のために、①「一日で」、②「すべての金融機関を訪問して申し出を行う」ことが必要です。申し出日が一日でも他行より遅ければ、「ウチは他行と同様に扱われていない」と考え、交渉への姿勢が非協力的になる金融機関もあるからです。
複数の金融機関がある場合は綿密にスケジューリングを行い、同日にすべての金融機関を訪問しましょう。
セオリー③ 期間は1年を目指す
リスケは金融機関にとってリスキーですから、期間をできるだけ短くしたがります。一般的には、金融機関が認める最長期間は1年だと考えておきましょう。1年ごとに経営改善の状況を見直し、少しでも改善していれば返済額を増やしてほしいと考えるからです。
注意したいのが、1年ではなく半年しか認めてくれない金融機関もあること。
実際のところ半年で経営改善を完遂できる事例はほとんどありません。リスケを行った企業が正常化(リスケ前の返済額に戻すこと)するには、相応の期間を要します。長ければ15年以上もかかることもあります。
少なくとも数年、またはそれ以上の年月、半年ごとにリスケ交渉しながら、社長は経営改善を続けられるものでしょうか。
リスケ交渉には、多くの労力が必要です。半年ごとでは経営者が本業に集中しにくく、長期視点での経営改善は到底おぼつかないでしょう。だからこそリスケ交渉では、最長期間である「1年」を目指すべきなのです。
セオリー④ リスケ希望期日の1ヶ月前に「経営改善計画書」を提出
リスケの申し出を受けた金融機関は、すぐにOKを出すわけにはいきません。担当者は「条件変更稟議書」を作成し、上司や審査部署からリスケの認可を得る必要があります。
その「条件変更稟議書」の作成には、「経営改善計画書」が必要です。担当者は「経営改善計画書」の内容を吟味し、それをもとに「条件変更稟議書」を作成するからです。
業況が思わしくない事業者ですから、「条件変更稟議書」は通常の「融資稟議書」より審査ハードルは高め。担当者はそのハードルを越えるために、より精緻な「条件変更稟議書」の作成に努めます。
これだけの「条件変更稟議書」作成、またその審査に時間がかかるのは想像に難くありません。少なくとも1ヶ月は見ておきましょう。リスケを始めたい期日の1ヶ月前には、「経営改善計画書」の提出を強くおすすめします。
※なおネクストフェイズは、事業者への個別アドバイスを行っていません。ご相談のある事業者は、ネクストフェイズが運営する一般社団法人融資コンサルタント協会の会員を検索して気軽に連絡を取ってください。融資の専門研修を受けた融資コンサルタントが、全国に900名以上います
リスケ交渉の実務知識を持つ士業・コンサルタントはそう多くありません。ほとんどの専門家は、顧客からのリスケ相談に適切なアドバイスができないでしょう。
適切なアドバイスどころか、リスケ交渉は一歩間違えると、容易に抜け出せない泥沼にはまることがあります。そうなると事業者はもちろん、支援する士業・コンサルタントにとっても通常のリスケ(=新規融資が不可能)に加え、「脱却への道の遠さ」という追加の心理的負担がのしかかります。
今後、リスケの相談は確実に増加します。顧客から急なリスケ相談があっても、あわてず対処できる知識・ノウハウを手に入れられるセミナーです。