- 2019-12-6
- 融資サポート
- 士業のビジネスモデル, 金融機関とのつきあい方
金融検査マニュアルは12月で廃止となります
こんにちは。株式会社ネクストフェイズのヒガシカワです。
12月5日の日経新聞の記事
ここで書かれているのは、主に貸し倒れ引当金の計上に関する内容となっています。
金融機関にとって、金融検査マニュアルが廃止されるということは、
ビジネスモデルの転換を図らなければならなくなるということを意味しています。
来年から再来年にかけて、融資方針が変更となる金融機関も、順次現れてくるかもしれません。
今回は、
「来年以降、金融機関がどう変わっていくのか」
「それが士業にとって、どのようなビジネスチャンスになるのか」
ということについて解説したいと思います。
金融庁が金融機関に求めていること
金融庁が金融機関に求めていることは、
「ビジネスモデルの多様性の発揮が求められる時代への対応」
です。
<金融庁の考え方>
かつては、国内の資金不足のため、資金ニーズが高く、金融機関が貸出先を選択することができたが、
近時は、金融を巡る環境が、人口減少・高齢化の進展、低金利環境の長期化等、大きく変化してきている中、
金融機関間の金利競争が続き、金融機関が貸出先から選ばれる時代となっている。
また、近時は、金融サービスの受け手のニーズが多様化している。
例えば、地域企業は、融資取引のみならず、事業承継、M&A、販路開拓、人材派遣、
オーナー経営者の資産運用等、多様なニーズを持つようになっている。
このような環境下で、様々な顧客のニーズに応えるため、自らの強みを活かし、
顧客との関係性(リレーション)により事業への理解を深めて、コンサルティング機能を発揮しつつ
資金ニーズに対応する等、独自の取組みを行っている金融機関も増えている。
こうした動きは今後も広がることが考えられる。
例えば、一部の金融機関では、単なる資金の貸付けにとどまらず顧客に付加価値を提供する取組みや、
かつてのように財務データや担保・保証の有無を過度に重視した融資から、
貸出先の事業の将来性や将来のキャッシュフローから返済可能性を評価した融資のあり方に
立ち戻るような取組みが見られる。
さらには、創業支援の場合に、銀行自らリスクテイクすることが難しいが成長が見込めるような顧客に
ベンチャーキャピタルや投資ファンドを紹介することや、顧客企業の商流拡大について助言する等、
融資に留まらない様々な取組みも始まっている。
(金融庁「検査マニュアル廃止後の融資に関する検査・監督の考え方と進め方(案)」より抜粋)
金融機関は2つのことを積極的に取り組まなければならない
金融庁が金融機関に求めているのは、2つ。
ひとつは
「事業性評価融資に積極的に取り組みなさい」
もうひとつは、
「本業支援を積極的に行いなさい」
ということです。
金融庁は、金融検査マニュアルにおいて、
「決算書の内容や担保・保証人を踏まえ、取引先を格付けしなさい。
そして、格付けの高い先にのみ融資するように」
としていました。
だから、以前は、債務超過であったり、2期連続赤字であったりという会社は、
なかなか融資をしてもらうのが難しかったのです。
金融検査マニュアルは、金融不安を抑える効果があった反面、担保や保証への依存を生み、
審査の目利き力を衰えさせてしまいました。
だから、当時は、どの金融機関も同じような融資方針で臨むしかなく、
融資における金融機関の独自性を発揮することができませんでした。
しかし、金融検査マニュアルが廃止になると、各金融機関は生き残る為に、
地域性やビジネスモデルに沿った独自性を発揮せざるを得ない状況となります。
(1)事業性評価融資
事業性評価融資とは、
「決算書の内容や担保・保証人だけで判断するのではなく、事業内容や成長可能性等を評価して
融資すること」
です。
この指導方針の変更により、今まで赤字決算や債務超過で借りられなかった企業が、
融資してもらえるようになったのです。
金融検査マニュアル時代の融資は、「過去の実績(決算書の内容、担保、保証等)」が重要でしたが、
事業性評価融資は、「将来の見込み(事業の将来性や代表者の資質等)」が重要となってきます。
(2)本業支援
本業支援とは、取引先企業の付加価値を高めるためのお手伝いのことを言います。
具体的には、取引先企業の売上や利益を増やすためのお手伝い。
また、その阻害要因となっている経営課題を解決するお手伝いのことです。
士業やコンサルタントが恒常的に行っている業務が本業支援になります。
金融機関が本業支援を行うことで、取引先企業の収益力を高め、新たな投資を行えるようにすることで、
その投資をするための融資額を増やすことを目的としています。
士業やコンサルタントにとってはビジネスチャンス
金融庁が金融機関に求めている
「「事業性評価融資」と「本業支援」に対する積極的な取組」
は、士業やコンサルタントにとっては、実は大きなビジネスチャンスなのです。
金融庁は2014年から、金融機関に対し、事業性評価融資への転換を求めていました。
しかし、多くの金融機関は、事業性評価融資に積極的に取り組みませんでした。
事業性評価融資を行うためには、取引先に対して、当該企業の事業性や、将来性とか、
成長可能性等を把握する必要があるのですが、多くの金融機関は、
取引企業の実態を把握出来ていなかったからです。
取引先企業の実態を把握するためには、担当者の「情報収集能力」と「情報分析能力」が
重要となります。
残念ながら、今の担当者には、それだけの「情報収集能力」や「情報分析能力」が不足していますし、
仮にあったとしても、忙しすぎて、そういった情報を集めるだけの時間がありません。
だから、事業性評価融資をしたくてもできなかったのです。
でも、金融検査マニュアルが廃止されたとなると、各金融機関は、否が応でも積極的に取り組まざるを得ません。
しかし、今の金融機関には、積極的に事業性評価融資に取り組める余裕がありません。
ここで、士業やコンサルタントが活躍できる場面が出てくるのです。
士業やコンサルタントが経営者を手伝って、その企業の将来性や成長可能性をアピールできる資料を作成し、
金融機関に提出することができれば、金融機関は積極的に事業性評価融資に取り組んでくれる可能性は
高まります。
その結果、クライアント企業の資金調達力も高まるということになります。
企業が事業性や将来性、成長可能性をアピールすることのできる資料、
それが「事業計画書」です。
これからは、事業計画書を作っているかいないかで、資金調達力は大きく変わってくるでしょう。
特に、赤字決算や債務超過の企業にとっての意味合いは大きくなります。
金融機関から顧客を紹介してもらえるチャンスが増える
「本業支援」についても、士業やコンサルタントにとってはビジネスチャンスになります。
金融機関の担当者が、取引先企業の収益力アップのサポートや、経営課題の解決のお手伝いが
出来るかと言えば、できません。
金融庁もそれがわかっているので、金融機関に対して、
「自分たちが出来ないのであれば、本業支援をできる専門家を紹介するだけでOK」
としています。
自分たちが直接手伝わなくても、専門家を紹介するだけで金融庁に評価してもらえるのであれば、
金融機関にとってはとても楽なので、今、多くの金融機関は、取引先に対して、
外部専門家を積極的に紹介しようとしています。
どうせ専門家を紹介しなければならないのであれば、自分たちのよく知っている専門家を紹介しよう
ということになるので、金融機関とパイプを作り、良い関係が構築できれば、
金融機関からお客を紹介してもらえる可能性が高くなるというわけです。
金融検査マニュアル廃止が産み出す「士業・コンサルタントにとってのビジネスチャンス」
を掴むために重要なことは、
「現在の金融機関を取り巻く状況」や「融資の流れやプロセス」、「金融機関の人間の考え方」といった
「金融機関に関する基礎知識」
を把握しておくことです。
「金融機関に関する基礎知識」を把握しておくことで、クライアント企業がより多額の融資を、
より借りやすくすることはできますし、金融機関から顧客の紹介を引き寄せることができるようになります。
そんな、「金融機関に関する基礎知識」を身につけるためのヒントが手に入ります。
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(東京) 12月7日(土、)25日(水)、26日(木)、1月9日(木)、1月10日(金)、14日(火)
(大阪) 12月23日(月)、1月8日(水)、16日(木)、21日(火)、22日(水)、2月13日(木)
※2月以降も日程あり。詳しくはサイトをご参照ください