- 2023-2-3
- 融資サポート
- コロナ借換保証, 信用保証協会, 士業のビジネスモデル, 民間金融機関における実質無利子・無担保融資
「顧問先が助かる制度だから積極的に提案したい」「でも報酬の相場がわからない」「そもそも借換したい事業者に報酬を支払う余裕があるのか」…など、料金の相場や請求方法に悩む声が多く聞かれます。具体的に回答しましょう。
こんにちは。株式会社ネクストフェイズのヒガシカワです。
コロナ借換保証制度の注目度の高さには、私も驚くほどです。それほどコロナ融資の返済に困る事業者が多く、このような顧問先を持つ士業・コンサルタントが多いのですね。
ネクストフェイズが運営する一般社団法人融資コンサルタント協会が毎月行う勉強会でも先日、コロナ借換保証制度の「報酬設定」についての質問が多数出ました。
コロナ借換保証制度の利用には、専門家によるサポートが不可欠でしょう。しかしサポート側としては、業務に見合った料金を請求したいし、またそうすべきだと私は考えます。
中小・零細企業の役に立ちたい士業・コンサルタントのみなさん、報酬額の設定や請求方法で悩むことはありません。以下の事例をもとにした私の回答を、ぜひ参考にしてください。
「コロナ借換保証制度」サポート、「無理のない」報酬目安
「コロナ借換保証制度」を利用できれば、1~5年間の返済猶予額がゼロになります。
報酬額算定の基本的な考え方としては、「延長された返済猶予期間における借り換えを行わなかった場合の返済額合計×5%」です。
※5%に設定したのは出資法との関連から。詳しくは出資法・創業融資サポート報酬の相場に関する過去の記事をご参照ください
●民間ゼロゼロ融資 約3,000万円/7年返済
●2023年3月から毎月30万円の返済開始 ← この額が報酬算出の基本になる
●コロナ借換保証制度を利用して3年間の猶予期間を確保できた
この場合、「延長された返済猶予期間における借り換えを行わなかった場合の返済額合計」は「30万円×12ヶ月×3年=1,080万円」で、報酬額の目安は「1,080万円×5%=54万円」と計算します。
とはいえ、あくまでも目安、基本的な考え方です。サポート内容の工数、依頼者との関係性などによって報酬を増減することもあるでしょう。
報酬に含まれるサポート業務
上記の報酬には、以下のサポート業務を含めるのが一般的でしょう。
経営行動計画書と補足資料の作成
コロナ借換保証の利用には、「経営行動計画書」の作成が必須です。とはいえ、この計画書の作成は、そう手間がかかる業務ではありません。
それだけに、「経営行動計画書」だけでは「返済可能性の根拠」として乏しいと受け取られるリスクがあります。補足資料の作成をおすすめするのは、そういう理由からです。
金融機関との交渉のサポート
コロナ借換保証での融資申請を行う際に、金融機関に同行訪問する業務です。
交渉現場で金融機関の意図を確認しながら追加資料を要請されたら、その作成業務も発生します。
なお交渉サポートとは、支援する専門家が金融機関と交渉するのではありません。専門家が金融機関の「意図」や「要望」を把握し、それを経営者に分かりやすく説明をした上で、金融機関の要望に応えられるようにする支援です。金融機関との交渉を行うと「非弁行為」に当たりますので、お気をつけください。
経営行動計画の進捗管理(モニタリング)
年に1度、保証協会所定の「伴走支援型特別保証制度フォローアップ報告書」を金融機関に代わって作成し、提出する業務です。
この報告書の作成自体は、依頼者と密なコミュニケーションを取っていれば1時間程度で作成できます。そう負担のかかる作業ではないので、3年間に3回(1年に1度なので)のモニタリングは上記の報酬に含めてもよいでしょう。
より具体的な業務内容は、ネクストフェイズの過去記事もぜひ参考にご覧ください。
「そんな報酬、一括で払えませんよ」と言われたときの分割支払提案
上記の事例での報酬は54万円+消費税です。しかし「コロナ融資の返済開始に困って相談しているのに、そんな額、一括で払えるわけない」と言われたらどうします?
こうなると、もちろん分割ですよね。資格ごとに、その請求方法をシミュレーションしましょう。
毎月の顧問料を請求している税理士、中小企業診断士、コンサルタント等
顧問料として毎月請求している額に、コロナ借換保証制度の報酬を分割して上乗せするのが、いちばん納得してもらいやすい方法でしょう。
54万円/3年/12ヶ月 = 1.5万円/月を顧問料に上乗せ(3年で終了)
ただし顧問税理士の場合、「コロナ借換保証の利用サポートだって、顧問料の範囲内ですよね?」と渋られる可能性もあります。
そこで、今からでもいいので、各業務の料金表を詳細に作っておきませんか。とはいえ他所の料金表をいくつもサイトを訪問して、それぞれ比較しながら自所にあてはめて作成するのは手間も時間もかかります。それでなくとも今、税理士はたいへんな繁忙期のはず。
ネクストフェイズは、「税理士料金表サンプル」および「顧問契約の確認に関する確認書サンプル」を配布しています。気になる方は、ぜひこちらからご応募ください。もちろん無料です。ご応募いただければ料金表以外にも、ネクストフェイズが配布している多数の資料ダウンロードが可能です。
毎月の顧問料のない中小企業診断士、コンサルタント等
紹介などをいただいて「スポット(単発)」で相談を受けてサポートする場合だと、毎月の顧問料がないのでもちろん上乗せはできません。が、どうしても一括払いが難しいと言われたら、12ヶ月に分割するのもひとつの案です。
54万円/12ヶ月 = 4.5万円/月(1年で終了)
もちろん途中で支払いが滞るリスクは残ります。しかし滞った場合、上記の「3/モニタリング作業」(1年後に発生)を断ることができます。
モニタリング作業を断られると事業者は自分では対処できず、最終的には「やっぱり…」と依頼されることでしょう。
また、もし返済猶予期間の3年が過ぎてもこの企業の収益力が上がっていなければ、リスケまたは新規融資が必要になります。そのとき、いちど支払いを滞らせてしまった専門家に、再度の依頼はしにくいですよね。
よほどの業績悪化が生じるか、またはそもそも悪質な経営者でない限り、分割にしても支払い続けるのではと私は考えます。
「モニタリング月だけ請求額アップ」はアリかナシか?
顧問料が発生する顧問税理士等の専門家、またそうでない専門家であっても、「どうしても、どうしても、毎月の報酬支払負担を減らしたい」と言われたら、「1年に1度のモニタリング月だけ請求額アップ」という方法を提案するのも一案です。
・通常月(毎月) (顧問料+)1万円×33回=33万円
・モニタリング月(1年に1度×3回) (顧問料+)7万円×3回=21万円
計54万円
これだと税理士は「3回のモニタリング月だけ追加料金がありますが、他の3年分は顧問料に1万円の上乗せでいいですよ」と顧問先に勧めやすくなるでしょう。
・通常月(毎月) 3万円×11回=33万円
・モニタリング月(1年に1度×3回) 7万円×3回=21万円
計54万円
ただしご想像のとおり、1年に1度だけの請求額変更は、請求側に一定の負担がかかります。そもそも、ここまでの対処が必要な企業は、かなり資金繰りが厳しい状況でしょう。支払いの途中で、廃業・倒産のリスクがゼロとはいえません。
事例では報酬額54万円ですが、冒頭に書いた「1/資料作成」「2/金融機関同行」「3/モニタリング業務」にそれぞれ料金を設定しておき、支払停止などのリスク時でもサポート側の負担を軽減する対策を講じるのもよいと思います。
コロナ借換保証制度を利用できれば、もちろんベストです。しかしもし謝絶されても、それで終わりじゃない。そのときは、リスケも視野に入れましょう。
リスケは、経営者にとってはもちろんですが、サポート側にとっても上記で説明した業務より負荷が大きいもの。
そうなると請求方法にも工夫が必要。次回以降のブログで詳しくお話ししましょう。
ともあれ経営者にとって資金繰り、資金調達は大きな悩み。こんな時勢なら、なおさらです。政府も各種の施策を打っていますが、実際に相対するのは金融機関。
その金融機関との上手なつきあい方を、最新の融資制度などを含めて学ぶことで、顧問先・相談者に自信をもって対応できる専門家を目指せるセミナーです。