- 2024-2-15
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- 創業融資, 士業のビジネスモデル, 日本政策金融公庫
日本政策金融公庫の創業融資が認可されると、銀行口座を開設しやすくなります。
こんにちは。株式会社ネクストフェイズのヒガシカワです。
今は少し落ち着きましたが、2023年12月14日公開のブログ閲覧数が一時期とても伸びていました。銀行口座を開設できずに悩む新設法人、またその支援を行う士業・コンサルタントが多いのではないかと推測しています。※本記事では「信用金庫」や「信用組合」の口座も含みます
上記では新設法人の金融機関口座開設に、「事業実態があることに説得力を持たせる」重要性をお伝えしました。が、それでも確実に開設できるとは限りません。
実は上記ブログ公開後に複数の銀行員や金融機関職員と話しあう機会があり、そのときあらためて確認した新設法人の銀行口座開設方法を今日はお伝えします。創業者支援を行う士業・コンサルタントは、ぜひ頭に置いておきましょう。
※なおネクストフェイズは、事業者への個別アドバイスを行っていません。ご相談のある事業者は、ネクストフェイズが運営する一般社団法人融資コンサルタント協会の会員を検索して気軽に連絡を取ってください。融資の専門研修を受けた融資コンサルタントが、全国に960名以上います
【現状】1年未満の新設法人は銀行口座を作りにくくなっている
前回ブログをさらに深掘りしてお伝えしたいのは、「今は多くの金融機関で、設立1年未満の新設法人は口座を開設するのが難しい」こと。
金融機関が新設法人の口座開設に消極的なのは、その口座が反社会的勢力に利用されるのを防ぐため。
銀行は口座開設を依頼されると、その法人が反社会的勢力かどうかを判断するため「事業実態」を細かく把握しようとします。その把握に手間がかかるため、最初から「新設法人の口座は開設しない」ルールを定めている金融機関が多いのです。
設立1年以上の法人は口座を作りやすい
しかし設立1年以上の法人だと、状況は変わります。
設立して1年を経過すると、企業は「決算書」を作成します。その決算書を見ることで金融機関は事業実態を容易に把握できるため、設立後1年を経過した企業の口座設立については、前向きに対応することが増えます。
反社会的勢力の目的は銀行口座の作成ですから、いちど作成できればその企業・事業の維持は考えていません。まっとうな事業活動は行っていませんので、費用と手間をかけてまで決算書を作成したりしないのです。
裏を返せば、決算書がある=「事業実態がある」と判断できる大きな根拠。また、決算書内容の分析で、経営内容を詳細に理解することもできます。設立1年以上の法人が銀行口座を作りやすい理由は、そこにあります。
しかし「1年も銀行口座開設を待てない」新設法人がほとんどでしょう。そこで…
【対策-初級編】公庫に創業融資を申し込んで可決されてから口座開設を依頼
設立1年未満の新設法人が銀行口座を開設する方法のひとつとして、あまり知られていませんが、「①日本政策金融公庫に創業融資を申し込んで → ②可決されてから金融機関に口座開設依頼をする」ルートがあります。(あくまでも創業融資を必要とする新設法人なら、という話です)
「銀行口座がないのに公庫に創業融資を申し込めるの?」と疑問に思う創業者もいるでしょう。はい、銀行口座がなくても、公庫の創業融資は申し込めるのです。
公庫に創業融資を申し込むとき「借入申込書」を提出するのですが(インターネット申し込みの場合は不要)、この借入申込書をご覧ください。(返済金の)引き落とし用銀行名は必須ですが、口座番号を記載する箇所はありません。
現在、口座作成の交渉をしている金融機関名を書いてください
万一、金融機関が変更になれば、わかり次第ご連絡いただければ結構です
融資の認可から実行までの間に口座が作成できていれば大丈夫なんです
創業融資を申し込んで可決された「後」、公庫には「金銭消費貸借契約証書」を提出しますが、その時点で銀行口座があればよいのです。
創業融資可決=銀行口座を作りやすくなる理由
公庫が創業融資を可決した事業者なら、金融機関も「事業実態は公庫が調査済み」「反社会的勢力かどうかも公庫が確認済み」と判断できるため、口座開設を断る理由はなくなります。
公庫から創業融資の認可をもらえば、信用金庫や信用組合なら、よほどのことがない限り口座開設に応じてくれるでしょう。
信用金庫・信用組合への新設法人口座開設の会話例
創業者を支援する士業・コンサルタントは、創業者に銀行(できるだけ第二地方銀行・信用金庫・信用組合などの地域密着型金融機関)に足を運んでもらい、次のように話すアドバイスをしましょう。
日本政策金融公庫から創業融資の認可をいただきました
つきましては、公庫に着金/引き落とし口座を伝える必要があります
貴庫/貴組の金融機関を指定したいので、口座開設をお願いします
【対策-中級編】(銀行口座がなくても)協調融資も申し込める
公庫に創業融資を申し込むとき、口座開設したい意中の金融機関との「協調融資」を申し込むことも可能です。その金融機関の口座がなくても、当該金融機関は協調融資の手続きを進めてくれます。
協調融資ではほとんどの場合、「地方自治体の創業融資(信用保証協会の保証つき)」での取り扱いになり、創業融資に関する審査は保証協会に任されます。
保証協会に対して当該金融機関が創業融資の審査依頼を行うとき、銀行口座は必要ありません。協調融資の場合も、その金融機関に口座がなくても受け付けてもらえるのです。
日本政策金融公庫で引き落とし口座が設定できるネット銀行
日本政策金融公庫の創業融資の認可をもらっても、地元の金融機関が口座開設に応じてくれなければ(めったにないと思いますが)、ネット銀行で法人口座を開設する方法もあります。
ネット銀行はリアル金融機関に比較すると、新設法人口座を開設しやすいもの。事業実態の調査にかける時間や手間はリアル銀行ほどではなく、ほぼ書類だけで判断するため、書類が整っていれば口座開設してもらえる可能性が高いのです。
以前なら、ネット銀行は日本政策金融公庫の引き落とし口座の設定はできませんでした。が、今は、私の知る限り2つのネット銀行でその設定ができます。
創業融資の「次の融資」(創業融資より審査ハードルが上がる)を考えると、口座開設は地元の地域密着型金融機関(第二地方銀行・信用金庫・信用組合)が理想です。が、それが難しい場合は次善の策として、上記ネット銀行での口座開設も検討しましょう。
今までの順番は、「①金融機関での口座開設」⇒「②創業融資の申込み」でした。もちろん従来から順番が逆でも対応可能だったのですが、私が取材した公庫担当者は、「ほぼこの順だった」と言います。
が、今後は創業者が事業用の口座を作りにくくなるため、「①創業融資の申込み」⇒「②認可」⇒「③金融機関での口座開設」の順番になってくるでしょう。創業融資のサポートを行うにも、今までとは違う対応が求められるようになります。
このようなノウハウ・業務の変化を、創業融資支援を行いたい士業・コンサルタントは逃さず把握しておきたいもの。私がさまざまな現場の声(おもに金融機関)を聞くところによると、創業融資支援に関しては今、過渡期にあるようです。数々の「常識」「王道」が、変化のときを迎えています。
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